成長する人は、つねに「悩み」を抱える
自問自答の4番目は、状況によい意味づけをする質問でした。
質問(4)「これ(ギフト=贈り物)は、自分の将来にとって、どんな意味があるのだろう?」
前回の連載で紹介した男性の悩みも、まさに「ギフト」だったのだと私は思います。
なぜなら、役員としてより上を目指す以上、部下との悩みだって本当はもっと高いところから考えなければいけないわけです。
たとえば、課長くらいの立場の方ならば、部下の数は5人くらいかもしれません。それならば一人ひとり、「何があったか報告しなさい」と聞けば済みます。
けれども、これが50人とか100人という部下を任されるようになった場合、とてもではありませんが、一人ひとりに確認することなどできません。
つまりは、個別に報告を聞いて指示を出すのではなく、全員にビジョンを示して、それに沿った行動をしてもらうような立場になるわけです。
こうした変化は、自分が頑張って成長してそのポジションについたからこそ「悩み」として生まれるわけです。
だからこそ「新しい自分のステージで本来やるべきことがまだできていない」ということに気づかせてくれるギフトであった可能性もあります。
実際、コーチングによってこの役員の方は、部下からの報告に頼るような仕事のあり方ではなく、経営者的な立場でお客さんとの関係をつくることを、主体的に考えるようになりました。
仕事だけでなく、学生から社会人になり、結婚し、家庭を持ち……ということになれば、私たちの悩みの質は変わっていきます。
そうでなくても、人は年齢を積み重ねていけば、それなりの社会的な責任を求められる立場になっていきます。
その都度、「悩み」というのは、自分がやるべきことを教えてくれる「ギフト」になるのです。
子どものころは「自分は今のままじゃいけない」なんて悩まなかったけど、今はいろんな本を読んで、なんとか自分を変えたいと思っている……だとしたら、それは成長の証なのです。
いずれも、心のどこかに「こうなりたい」という理想を持ち、チャレンジしたいと思うから、悩みは生まれます。
正しく自問自答すれば、あらゆる悩みが自分を成長させてくれます。