「あの人がいなくなれば」は、幻想にすぎない
悩みを「ギフト」としてとらえる人がいる一方で、多くの人は、悩みの原因を自分以外のどこかに求めてしまいます。
第2章の「悪い自問自答」で見てきたように、その状態は思考停止で、物事が先に進まなくなるだけです。
「あの人がいなくなれば、悩みは解決するのに」「会社が変われば、もっと楽になるのに」「お金がもっとあれば、こんなこと悩まなくて済むのに」
誰かのせい、会社のせい、環境のせい、社会のせい……と、確かに本当に変わってくれるなら、悩みはなくなるのかもしれません。
しかし、先の上司の例で見たように、「他人を変えよう」と努力しても、結果はたいていうまくいかないのです。
病気になる以前から、私はコーチとして、妻の友人の悩みなども聞いていましたから、オフィスにはいろんな人が訪ねてくるようになっていました。
私にとっては情報収集も兼ねたことで、相手は主婦の方だったり、OLさんだったりとさまざまでしたが、多くの場合が“他人の話”で、たいていはダンナさんやママ友など、他の人に変わってもらいたいと思っているか、自分ではどうしようもないと考えていました。
そうした方の場合、不満はあっても「具体的にどうなってほしい」という明確な目標が定まらないから、結局、何の行動にも結び付かないケースが非常に多いのです。それでは状況は改善されません。
小さな悩みから大きな逆境まで、それが生み出されるにはいろいろな要因がありますが、乗り越える方法は、すべて自分自身の主体的な行動によるものです。
ですから自分が何を求め、何を守るために行動するのかが見えないと、解決するための策が何も見出せません。
責任転嫁するのは、結局、「自分が行動しないための言い訳」をつくりだしているだけの行為になってしまうのです。だから「どうして、こんなことになってしまったのだろう?」と、自分に問うことには意味がありません。
そうではなく、質問(5)「今、自分がすべきことは何だろう?」「私はこの状況に対して、どんな行動がとれるだろうか?」と問うことが必要になるのです。