東芝は、原発子会社ウエスチングハウス(WH)を通じて、巨額損失の元凶となる無謀なS&W買収になぜ踏み切ったのか。
東芝の説明によると、米国の原発4基の建設コストの増加で電力会社やパートナーのCB&Iとトラブルが発生したため、CB&I傘下の建設会社S&Wを直接管理下に置き、残りの工事をスムーズに進める狙いがあったとする。
この一方で、ある東芝の関係者は「もともと東芝には建設事業参入の野心があった」と証言する。一般的に原発の新設プロジェクトは、EPC(設計・調達・建設)契約額のうち、建設会社が7割の取り分を確保するため、原子炉を設計して納入するだけではうまみが少ない。
そこで東芝が進めていたのが、S&Wの親会社だった米建設会社ショー・グループの買収構想だ。佐々木則夫社長時代の遅くとも2012年にはプロジェクトチームが発足していたが、結局、この構想は実現せず、ショーは13年にS&Wもろとも、CB&Iに買収される。だが、その後に東芝が踏み切ったS&W買収は、建設会社買収構想そのものだったのではないか。東芝には「建設・土木会社のリスクを評価できる人材は皆無」(東芝内部関係者)。知見のない中でのS&W買収は無謀だった。
東芝とショーには因縁がある。ショーはかつてWH株の20%を保有する共同出資者だったが、12年秋に東芝に買い取りオプションを行使して出資から離脱。そのショーを買収したCB&Iも、S&Wを東芝に売り抜けて原発から距離を置いた。
反対に原発リスクを一挙に抱え込んだのが東芝だ。米原発4基は13年の建設と同時にコスト増が発生したが、それを無視してリスクの高い建設会社の買収に「チャレンジ」したなら罪は重い。
(「週刊ダイヤモンド」編集部)