写真背景はロームSiCパワー半導体の生産拠点の宮崎第2工場(宮崎県国富町) 写真:ローム提供、ZUMA Press/aflo、JIJI、picturedesk.com/JIJI
デンソーがロームに完全子会社化を提案する大勝負に出たことで、電気自動車(EV)市場の低迷で停滞していたパワー半導体業界の再編は急展開を迎えた。デンソーに対抗するのが、ロームと提携協議を進めてきた東芝だ。ダイヤモンド編集部の取材から、三菱電機を巻き込んだ「大連合構想」の輪郭も浮かび上がる。特集『AI産業戦争 米中覇権に呑まれる日本』の#14では、ロームを巡り激化する、水面下の主導権争いの攻防に迫る。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
膠着していたパワー半導体再編の呼び水に
「デンソーショック」の破壊力
日本でパワー半導体の再編が本格化した起点は2023年にさかのぼる。経済産業省が、電気自動車(EV)向けの炭化ケイ素(SiC)パワー半導体の強化を狙い、巨額の補助金支給による再編促進策を打ち出したのが発端だ。
この第1号案件となったのは、ロームと東芝だ。23年12月、経産省は両社による3883億円規模の共同事業に対し、最大1294億円の補助金を決定。これを受けてロームは、24年7月から東芝との提携協議に踏み出した。
続いて存在感を示したのが、デンソーだ。24年9月にロームとの提携検討で合意し、同年12月には富士電機と2116億円規模のSiCパワー半導体の共同生産を打ち出した。こちらも第2号案件として最大705億円の補助金を獲得した。
その後もデンソーは攻勢を強める。25年5月にはロームと提携で合意してアナログ半導体の協業に乗り出したのに続き、同年7月末までにローム株の5%弱を市場で取得し、さらなる関係強化に踏み込んだ。
しかし、この再編機運に水を差したのが、EV市場の失速だ。米国ではトランプ政権がEV支援政策を相次ぎ打ち切った。一方で中国では、SiCパワー半導体分野で、杭州士蘭微電子(シーラン)やBYDが猛追し、日本勢を脅かし始めた。
半導体市場全体は、旺盛なAI(人工知能)需要を背景に急拡大しているが、パワー半導体はその波に乗り切れていない。ロームはEV需要を前提にした巨額投資が裏目に出て、25年3月期に12年ぶりの最終赤字を計上。これにより人員削減や工場再編といった構造改革に追われ、再編論議は下火となっていった。
この膠着状態を一気に打ち破ったのが、今回のデンソーによるロームの買収提案というわけだ。
複数の関係者によると、デンソーによる最初の打診は今年1月。2月には正式な提案書がロームに提示されたという。この一手により、ロームとの提携を進めていた東芝も対抗策を迫られ、パワー半導体の再編劇は急展開を迎えた。
次ページでは、デンソー、ローム、東芝、三菱電機の水面下の攻防をつぶさに追うことで見えてきた「ローム争奪戦」の実態を明らかにし、パワー半導体の業界再編の方向性を大胆に見通す。







