このように働き方改革はすでに進行中なのだが、ハイスペック女子のみなさんは、そこに不満と危機感を抱いている。労働者のため、とくに働く女性のために長時間労働を是正しようとしているのに、なぜにこうも不満が出てくるのか。それは多様性が欠如、あるいは間違った認識をしているからだ。

 働き方改革の骨子のなかには、「多様な働き方」という考え方も入っている。しかし、実際にはその多様性とは、「画一的な多様性」という矛盾したものでしかない。世の中には、なるべくなら働きたくない、休みは多い方がいいという人もいれば、寝る時間も惜しんで仕事をしたい人もいる。その代表例がクリエイターで、一流のクリエイターはおおむね、寝る間も惜しんで仕事をしていて、そうすることが好きな人たちだ。しかし、政府が働き方改革と言い出して、電通が書類送検されて以来、クリエイティブの世界にも「長時間労働是正」の圧力がかかり、深夜の労働が禁止されるようになっている。そのため、何かの作業の途中でも、強制的にオフィスや仕事場を追い出されるようになっている。続きはまた明日というわけだが、それで果たして、優れたクリエイティブができるのだろうか。

 コンサルタントの仕事も長時間労働の典型的な世界だが、企画書やレポートを20時間、30時間ぶっ通しで書くことも普通にある。ミュージシャンや映像クリエイターがスタジオにこもって延々と作業をやるように、コンサルタントもパソコンに向かって延々とレポートを書く。テンションの持ち方は同じで、だから長時間労働になりがちなのだが、これも今の流れでは是正の方向に進み、19時になれば強制的に退社となるのかもしれない。しかし、それでレベルの高いアウトプットが可能かというと、甚だ疑問だ。

 つまり、多様な働き方と言いながら、長時間働くことの多様性は考慮されていない。それが今の働き方改革の流れだ。つまり、今の働き方改革の議論は、「有休も取れず、無駄な残業を強いる」という画一性から、「有休は100%消化して、定時で必ず退社する」という画一性にシフトしているだけである。もちろん、無駄な残業はなくすべきだし、有休も取りたい人は取れるようになるべきだ。しかし、何が何でも働くなという、下方圧力を社会全体にかけることで、本当に生産性が上がるのだろうか。そして、たとえばスティーブ・ジョブズのようなイノベーターが登場するのだろうか。

デタラメ社員が
いい仕事をしていた時代

 多様な働き方の先進事例として必ず出てくるのが、「月単位での勤務時間管理」と「ロケーションフリー」だ。たとえば、月160時間が規定の勤務時間だとすれば、オフィスだろうが、自宅だろうが、南の島のリゾートホテルだろうが、どこで働いてもOKというシステムで、これはこれで素晴らしいシステムではあるが、実は日本においても先進事例でも何でもない。昔の大企業は、意外と(事実上の)フレックス・ワーク・アワーで、ロケーションフリーだった。

 これも第168回で紹介したが、昔の電通がその典型だった。昼頃にしか出社しなくて、会社に来たらそのままランチに行く社員もザラだったし、平日の昼間からホテルのプールで泳いでいたり、銀座に飲みに行く途中の夕方にしか会社に顔を出さない人もいた。最近会社に来てないからどこにいるのかと探したら、ニューヨークにいたなんて話もある。とにかくデタラメだった。そして、そのようなデタラメ社員がいい仕事をしていた。