真夜中のタイトル会議

―― 書名は、随分思い切ったものになったね?

寺田 これは相当悩みました。出版前に、吉祥寺の書店さん5店舗を営業と一緒に回りました。そこで、タイトル案を複数持っていき、「どれがいいですか?」と聞いたのですが、答えが五者五様(笑)。

―― 他にどんなタイトル案が?

寺田 『小ざさ物語』とか、『たった一坪の店で……』、『1坪で3億円を続ける商い』とか……。いまから思うと恥ずかしい案もありました。

 書店の方の意見もバラバラなので、これはもうエイヤ! で決めるしかないと。

 もっとも、企画段階では「たった1坪、2品だけで、年商3億円」というコンセプトがしっかり根をはっていました。

 メインタイトルは、本の持ち味をできるだけシンプルに! サブタイトルは、「行列」と「吉祥寺『小ざさ』」というコピーだけは入れよう、と思っていました。最終的に考えたのは、「この本の魅力って何だろう?」ということ。「小ざさ」というお店だけではないし、著者だけでもない。「小ざさ」と著者の人間性の魅力が織り成す形で着地できないかと。撮影した写真を見ながら、カバーとタイトルイメージを同時に考えました。ただ、書名よりも、カバーイメージが早くあったのかもしれません。

 そんなある日の深夜、まだ会社にいた上司と、タイトル案をああでもない、こうでもないと話していました。そのときに、「商いというのは違うんじゃない?」って言われたんです。「モノを右から左に流すイメージに聞こえるけど、『小ざさ』はものづくりに魅力があるんじゃない?」と。

 そして、「著者キャラを前面に」とか、「できるだけタイトルは短く、インパクトのある数字を使いたい」と話しながら出てきたのが、『1坪の奇跡』です。

 みなさんよく『一坪の奇跡』と間違えられますが、正しくは『1坪の奇跡』。これは縦組みのカバーイメージが最初からあったので、算用数字の「1坪」にこだわりました。最後は意外とあっさり決まりましたね。

 『1坪の奇跡』というたった5文字のタイトルは、僕がこれまでつくってきた中で、最も字数が少ない(笑)。最高文字数は、生涯90作目の岩松正記著『個人事業、フリーランス、副業サラリーマンのための「個人か? 会社か?」から申告・節税まで、「ソン・トク」の本音ぶっちゃけます。』が62文字ありましたから、『1坪の奇跡』は、10分の1以下ですね(笑)。