カバーの写真撮影は、「15分1本勝負」!

―― あとカバーの写真がいい!

寺田 ありがとうございます。お店の前で佇む著者を撮りたい、というのは、最初からありました。どうしても入れたかったのが、「小ざさ」の木の看板、ステンドグラス、1坪感丸出しの屋根の一部。この「3点セット」を背景に、著者の稲垣社長の品のよい笑顔、という写真にこだわりました。

第一回『1坪の奇跡』(後編)<br />カバー撮影は15分1本勝負!<br />奇跡の詰まった78歳処女作はどうやって生まれたか?「奇跡の1枚」。小ざさのすべてがこの1枚に詰まっている。

 そして、ロケハンのために、撮影前日にお店の前に立って、どの角度から撮ればイメージどおりの写真が撮れるか。夕方の吉祥寺ダイヤ街の雑踏の中、デジカメでパシャパシャ撮りました。

 そこで、この写真の角度が見えてきたんです。「3点セット」の共通解を見出す角度は、「ここだあ!」と。これを発見したときは、やった! とガッツポーズでしたね。

―― 雑踏の中、デジカメで撮るって相当怪しい人だった?

寺田 もろ怪しいです(笑)。1時間以上、ダイヤ街の「小ざさ」と隣のメンチカツで有名なサトウさん、そしてハーモニカ横丁をうろうろしていましたから。でも、机の上であれこれ考えるのではなく、現地に行って、現場にしかない息吹を感じながら表紙の写真や書名ができたのは、自分らしくてよかったですね。

―― 撮影当日は順調に進んだ?

寺田 カメラマンには当日、デジカメを見せながらイメージを伝えました。それまでもカメラマンとは打合せをしてきたので、すぐにイメージを理解してくれて、それから「15分1本勝負」の撮影に挑みました。撮影当日は、早朝の行列を撮ろうと、朝6時からカメラマンは現地に入っていました。開店は10時。

 で、この表紙の写真のように、①暖簾が出ている、②お店の照明がついている、③お客さんがいない時間帯、というのは、実は「朝9時45分~10時までの15分」しかなかったんです。製作の裏側を明かせば、この「15分1本勝負」という、相当な緊張感のなかでパシャッとやったんです。