相続争いは
お金持ちだけの問題ではない

 さらに、財産がない人ほど争う傾向があり、こうした人は、200万、300万円の相続で争うこともあります。このように相続争いは、お金持ち家族だけの問題ではありません。

 近年、こうした揉めごとが増えているのは、経済的な理由からです。40代や50代になって失業や離婚など若い頃には自分が思ってもみなかった状況になった人、老後は年金での円満生活を予想していたのが当てにできなくなった人……こういった人が増えているのです。こうした人は、いまさら新たな収入源も当てにできず、頼るのは親の財産ということになります。

 遺産分割協議で、相続人の間で主張が対立したまま合意できないと家庭裁判所での調停や審判にまで発展します。こうなると、解決までに長い時間がかかるだけでなく、親族間の人間関係にしこりが残る場合もあります。このように、親の死後の親族間のトラブル予防の面から遺言書は不可欠と言えましょう。

遺言書は
残された親族への負担を減らす

 親が遺言書を遺すことの第二のメリットは、相続手続きをなるべく簡単にし、残された親族への負担を少なくできることです。

 遺産分割協議が終わると、それをもとに、残された親族によって亡くなった親が取引していた金融機関の口座やクレジットカードの解約・名義変更、不動産の相続登記をする必要があります。この作業だけでもやっかいなのですが、相続人の数が多くなると手続きはさらに煩雑になります。

 相続手続きをするのにさまざまな書類が必要です。それは、①死亡した親の出生からすべての戸籍謄本と除籍謄本、②相続人全員の戸籍謄本・住民票・印鑑証明書、③不動産の登記簿謄本・評価証明書などです。こうやって書き出すと簡単なようですが、実際にはこれらを揃えるとなると、多くの手間と時間がかかります。