日本はデフレが続き、その影響に苦しめられてきたのですから、むしろ前向きに捉えるべきでしょう。

 超低金利下では金利の下げ余地が小さく、金融政策の物価下落に対する効果は限られたものとなります。中央銀行だけでは、物価をコントロールできない可能性が出てきました。

 インフレが加速を始めるのは、財政拡大の動きがあってこそということです。人々が物価の急速な上昇を認識したときに、中央銀行や財務当局は物価過熱の抑制策を取ることが必要です。

【クリストファー・シムズ教授は、2011年にノーベル経済学賞を受賞した経済学者。金融政策がマクロ政策に与える影響などを研究し、「物価水準の財政理論」(Fiscal Theory of Price Level、FTPL)の論客として知られる。

 FTPLとは、物価動向を決める要因として、財政政策を重要視する考え方。政府が将来増税しないと約束し、財政支出を増やしていけば、人々が財政赤字拡大から、将来、インフレが起こると予測し、消費や投資を拡大する。それが物価上昇の圧力となり、インフレが発生して、デフレや低インフレ状態から脱し得ると説く。

 財政支出の拡大で政府債務が拡大するが、FTPLではインフレで実質債務を圧縮するという考え方だ。】

物価目標実現が見えるまでは
消費増税を延期

──日本は19年に消費増税の実施を予定していますが、消費増税については延期、凍結、実施のどれが望ましいのでしょうか。

 日本で19年10月の消費増税の実施はすでに決定ずみとなっています。ただ、当局が過ちを犯したと思う点は、彼らが19年10月という具体的な時期を明文化したことです。なぜなら、財政拡大策と消費増税による財政緊縮策を同時に行うことは矛盾しているからです。人々は「将来に増税が待っている」と思えば、政府が財政支出を拡大しても、消費を拡大しないでしょう。