「共通の敵」中国の存在が
日米関係を緊密にする

 次に「戦略」の視点から、今回の訪米を考えてみよう。

 外交における国益は、主に「安全」と「経済」(金儲け)だと書いた。では、この2つ、どちらがより大事なのだろうか?

 実は答えは明白で、「安全」の方が、「経済」より上なのだ。なぜかと言えば、これは結局「お金(経済)と命(安全)どっちが大事?」という質問だからだ。答えは明らかで、「命」の方が大事だ。

 そして、過去の例を見ても、「共通の敵」がいるとき、2つの国は一体化する。「最重要課題=敵に勝つこと」になり、その他大部分の問題は、先鋭化しない。

 たとえば、「冷戦時代」を見てみよう。日本と米国には、ソ連という巨大な敵がいた。米国の大戦略は、「日本と西欧を味方につけてソ連を封じ込めること」だった。つまり、日本と米国は「大戦略」が一致していたのだ。

 両国には、対立点もあった。日本の対米貿易黒字が膨らみ、問題になっていったのだ。それでも、最重要課題は「ソ連」であり、日米関係は概して良好だった。

 しかし、1991年末にソ連が崩壊すると、状況は一変する。ソ連という「共通の敵」が消滅し、日本と米国には、共通の大戦略が不必要になったのだ。安全面での懸念が遠のいた結果、金儲けが安全より優先されることになった。 

 米クリントン政権(当時)は90年代、「日本異質論者」を重用し、遠慮なく日本を叩いた。それだけが原因ではないが、日本経済は「暗黒の10年」とも「20年」ともいわれる低迷時代に突入していった。

 しかし、時代は変化している。2015年3月、米国と「特別な関係」にあるはずの英国は、米国の制止を無視し、中国主導「AIIB」への参加を決めた。そして、ドイツ、フランス、イタリア、イスラエル、オーストラリア、韓国などが、続々と「AIIB」に入っていった。

 「親米諸国は、もはや米国ではなく中国の言うことを聞く!」

 この事件の衝撃は、米国を目覚めさせた。こうして、世界は再び「冷戦時代」に向かいはじめた。今度の主役は、米国と中国である。米国は再び「大戦略」を必要としている。その基軸は、先月書いたように「ロシアと和解し、中国と対峙する」である(詳細はこちらの記事を参照)。

 そして、欧州一のパートナーは「EU離脱」を決めた英国であり、アジアでは日本との協力が最重要になる。 

 こういう新冷戦構造の中で、「安保」は「経済」より上になる。それで、「米ソ冷戦時代」にそうであったように、日米関係は好転していくのだ。

 このような背景、時流もあり、今回の安倍訪米は「戦略的大勝利」となった。経済問題では対立を避け、「尖閣は日米安保の適用範囲」と保証させた。日本は、今回の首脳会談で、より安全になったのである。