Photo:The New York Times/AFLO

米国憲法違反の恐れもある
7ヵ国からの入国制限

「米国はたまに間違えるが、それを修正する民主主義がある」――。

 しばしば、このように言われるが、今まさに、米国の民主主義が試されている。

 トランプ新大統領は、連日のように大統領令に署名し様々な政策運営を行っている。主な内容はインフラ投資、パイプライン建設、メキシコ国境との間に壁を建設するなど様々なものがある。それらに共通して言えるのは、米国政府が、明確に「自国の利益」を優先し、保護主義政策や対外強硬姿勢をとっていることだ。

 1月27日にトランプ大統領が署名した大統領令を巡り、政権批判が一気に、噴出している。この大統領令は、シリア難民の入国を120日間禁じ、イスラム国など“テロの温床”と見られてきたイラク、シリア、イラン、スーダン、リビア、ソマリア、イエメン7ヵ国からの入国を90日間禁止するものだ。

 これに対し、西部ワシントン州の連邦地裁は2月3日、入国制限の即時差し止めを命じる仮処分を下し、現在は入国可能な状態だが、トランプ大統領側は不服として反発しており、混乱は長引きそうな気配だ。

 そもそも、こうした入国制限は、基本的に宗教などによる差別につながる可能性が高い。それは米国が重視してきた“自由”そのものに反する。そして、入国制限は米国の憲法に違反している恐れもある。

 米国は、多様な人種を受け入れ、社会の活性化と経済の成長を遂げてきた。それだけに、米国の産業界や法曹界からも、入国制限を命じる大統領令への批判は強い。これまで規制緩和の恩恵を見込んで、政府寄りだった大手投資銀行ゴールドマン・サックスのロイド・ブランクファインCEOは、多様性の重要性を強調し、トランプ政権の対応を批判した。

 自動車業界やIT業界などからも、トランプ政権への批判は増えている。それは、国際社会にも広がりを見せている。トランプ大統領は、自身の政策がどのような社会の反応を招くか、冷静に考えることができていない。