時には米国に注文を
東アジアでの指導力は緊要

 とりわけ、米国が世界における指導力を失ってしまうことは避けなければならない。東アジアの今後の安定に腐心する日本にとって米国が指導力を保持することは重要である。それでなくとも新興国の台頭により国力のバランスが変わり、米国を先頭とする先進民主主義国の求心力にかげりが見える時、トランプ大統領の米国が「米国第一」を掲げ国際社会の利益を損なうことを厭わない姿勢は米国の指導力を一層損なう。特にTPPからの離脱やメキシコとの壁の建設、入国禁止などの一方的行動は非難されても致し方がなかろう。

 第二に、日米経済関係である。今回の首脳会談で新しい経済対話の立ち上げが合意された。日米自由貿易協定といった枠組みに決め打ちしなかったことは評価されるし、日米が経済面の緊密化を議論するのは好ましいことである。ただこれまで日米は数限りない協議の場と合意を尽くしてきたわけであり、少なくともこれら過去の協議結果について十分な検証が行われるべきだろう。

 自動車をはじめとする自主規制、為替に関するプラザ合意、多くの市場開放合意、80年代の分野別協議、90年代の構造協議。日本は米側の要求に真摯に対応したし、多くの分野で市場開放が行われたことは日本自身の利益にもかなうことだった。しかし結果的に米国の貿易黒字が大きく減少したわけではなかった。またこれまでの協議は往々にして日本市場のみを課題とする向きが強かったが、今回の協議は双方向であることを厳格に守るべきである。二国間のFTAには多くの無理があり、TPPに米国が戻るべきことを粘り強く説得するべきだろう。

過去の日米経済協議の検証を
東アジアでの安保の役割は

 第三に日米安保関係である。首脳会談で語られたとおり、日本は安全保障上の役割を拡大していく必要があるが、防衛費の飛躍的拡大などを云々する前に、新たな安保法制の下で実施できる計画作り、共同訓練などを活発化していくべきだろう。特に朝鮮半島有事についてはこれまで日本は十分な役割が想定できず、米国や韓国と危機管理計画が作れなかったが、今後積極的に取り組む必要がある。

 このような計画作りだけではなく日本が東アジアにおいて安全保障上の役割を拡大していくことを慎重に進めていく必要もあろう。筆者がシンガポールで面談した政府要人が、「日本が安全保障上の役割を果たしていくことを歓迎するが、日米安保条約の枠の中で進められることが地域に安心感を与える、また、どこかの国を敵視した形で行われることは地域にとって好ましいことではない」と述べていたのが印象に残った。