TBS系テレビ「爆報!THEフライデー」でも紹介された『身近な人ががんになったときに役立つ知識76』。著者は、国立病院の現役医師である内野三菜子さん。がんの主治医に聞きにくいようなことや、知っておいたほうがいいことなどを解説したこの本が、今、話題になっています。
この連載では、その本の中から気になるところを、再編集して紹介していきます。

退院する、イコール
「完治」ではない

内野三菜子(うちの みなこ)
東京都出身。国立国際医療研究センター国府台病院 放射線治療室長。聖マリアンナ医科大学放射線科、埼玉医科大学国際医療センター放射線腫瘍科を経て、カナダ・トロントのプリンセスマーガレット病院放射線腫瘍科にて、日本人初のクリニカルフェローとなる。並行してトロント大学オンタリオ教育研究所(大学院)医学教育学にて修士号取得。帰国後、国立国際医療研究センター病院を経て、現職。日本医学放射線学会専門医(放射線治療)、がん治療認定医

 経過観察って何?

 治療後の検査で「手術で、がんは取りきれたようです」「放射線の効果で、がん細胞は小さくなっていますね」と医師に言われることは、つらい治療を耐えてきた患者さんにとって何よりの喜びだと思います。でも、もう少し、病院とのお付き合いは続きます。

「がんはしっかり取りきれた」「転移はなさそう」とこの時点で判断されても、CTやMRIに写らないようなごく小さながんや、顕微鏡でしか見えないようながん細胞が体に残っていることもあるので、治療が一段落したあとも、しばらくは「経過観察」のために通院をする必要があるのです。

 そして、定期的に検査をして再発や転移がないかを調べ、「今回も転移・再発はありませんでした」という状況が最低限5年、がんの種類によっては10年ほど経過したときに、はじめて「完治といえそうです」という医師の言葉が聞けるようになります(それでも完治と断言する医師は少ないと思います)。

 ときどき、「手術や放射線をかけたら治療はおしまい」と勘違いして、定期検診に来なくなってしまう患者さんがいます。「忌々しいがんとはさっさとおさらばしたい」という気持ちはよくわかりますが、その後の経過観察を怠ると、再発・転移しても見つけられず、次の治療のタイミングを逸してしまう可能性があります。

 ですから、がんの治療後は、いくら体調がよくても自己判断で経過観察を中断したりせず、定期的に決められた受診は必ず受けるようにしてください。

 このように、がんは治療後も長い経過観察が続くので、日常生活にもどってからも「がん」というものを意識して毎日を過ごすことになります。また、ご自身の体の状況からも、がんという病気を突きつけられる場面もあるでしょう。