「がん」になったら、仕事はどうしよう、多額の治療費がかかってしまうのでは…と、心配する人も多いと思いますが、日本では公的な保障があり、多くの人を支えています。しかし、それらは申請しないともらえないものがほとんど。
現役の国立病院の内野三菜子医師が、がんの主治医に聞きにくいようなことや、知っておいたほうがいいことなどを解説した本『身近な人ががんになったときに役立つ知識76』の中では、治療や病院選びのほかに、こうした公的な保障についても詳しく解説しています。

65歳以上でなくても、
「介護保険」が使えるケースも!

 がんで「介護保険」は使えるの?

 通常、介護保険は65歳以上で介護が必要になった人を対象としたものですが、医師が「治療は困難な状況」と診断した末期のがん患者さんなら、40~64歳でも介護保険のサービスを利用することが可能です。
 市区町村に介護保険の利用を申請すると、自宅などに調査員が来て、利用者の心身の状態などを聞き取り、医師の意見書をもとに、介護認定審査会で要介護度が決められます。がんで、身の回りのことが自分でするのが難しくなったり、車椅子や介護用のベッドが必要になったりすることがあります。そうした場合に利用したいのが介護保険です。

 要介護度は、要支援1~2、要介護1~5の合計7区分です。数字が大きくなるほど、介護の必要性が高いと判断され、使えるサービスの限度額も増えていきます。そして、利用者は実際に使った介護サービスの1~2割を自己負担します。

 介護保険にはさまざまなメニューがありますが、自宅で過ごす人をサポートするのが「居宅サービス」です。訪問介護(ヘルパーが訪問して、食事や入浴、排泄などの介助、炊事や洗濯などの家事援助をしてくれる)、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリなどがあり、ストマ(人工肛門・人工膀胱)のケアなども含まれます。このほか、車いすや介護用ベッドなど福祉用具を借りられたり、手すりの取り付けなど自宅の回収費用の一部を支給してくれたりします。

介護保険を利用できれば、かかる費用を抑えながら、家族の負担も軽減できるので、遠慮せずに介護保険の申請をしてみましょう。

 ただし、要介護認定の通知は、原則30日以内です。がんの末期の患者さんは、予期せず突然に容態が急変することもあるので、迅速に対応してくれる自治体が増えてきていますが、それでも「今日、申請すれば明日から使える」というものではないため、間に合わない状況も考えられます。

 最低でも申請してから1~2週間はかかるので、症状を和らげる治療を中心とする医療の段階になり、自宅で過ごすことを考慮する場合には病院内にある相談支援センターや地域医療連携室などを通じて、介護保険のケアマネージャーを紹介してもらったりして、早めに在宅療養ができる体制を整えるようにしましょう。