米GE出身の“プロ経営者”藤森義明氏の後を受けて、住友商事出身の瀬戸欣哉氏がLIXILグル―プに転じて1年が過ぎた。米国滞在が長く、日本、米国、東南アジア、欧州と異なる国・地域で計11のインターネット系ベンチャー企業を立ち上げた実績を誇る起業家は、どのような考え方の持ち主なのか。世界で8万人以上の従業員を擁する大組織で、大きな愛社精神を育てようと取り組む経営者の人物像に焦点を当て、硬軟織り交ぜて話を聞いた。(聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)
――今年1月下旬に、前任の藤森義明氏(現相談役)が、初の著書となる『リーダーは前任者を否定せよ プロ経営者の条件』という本を出しました。そろそろ瀬戸社長も前任者を否定してもよいのではないですか。
はっはっは。そういえば、「君に対するエールとして書いた」との連絡をいただいていました。早く読まなければいけませんね。私は、藤森氏が社長在任中の約5年間に行った数々の改革を否定することを目的にはしません。むしろ、刻々と変化する目の前にある諸問題に対して、私が正しいと判断した上で行った経営が、結果的に前任者を否定することになったとしても、それは躊躇せずに進めていきます。
――瀬戸社長は2016年6月の就任直後に、経営幹部を6階層から5階層に減らした上で、人数も114人から53人へと半分以下に削減しています。加えて、幹部の任期は1年ごとの更新にしました。なぜ、そうする必要があったのですか。
LIXILグループは、11年にトステム、INAX、新日軽、サンウエーブ工業、東洋エクステリアの5社が経営統合して発足しました。その後も、国内外でM&A(合併・買収)を繰り返してきたことから、管理部門が肥大化していました。
現在では、約150の国・地域において、8万人以上の従業員を擁する大きな組織になっています。ですから、もっとスピード感を持って動ける“風通しの良い組織”にするために、16年7月から新体制の経営に移行しました。LIXILに来て、私が最大の欠点だなと感じたのは、社内のコミュニケーションが不足していることです。経営統合で、本当に1つの組織になることができたかと言えば、まだまだ融和が足りていません。
私は、“従業員が愛着を持てるような会社”に変えていきたい。