日本のシステム、人々の価値観を大きく揺るがせた東日本大震災。日本社会はこれから深刻な混迷期に突入するかもしれない。アフター3.11をどう生き抜けばいいのか。「絆」によって乗り越えるのか、それともあくまで「戦う」のか。この連載では、“問題の現場”を知る2人のインタビュイーが登場。対立する立場から、混迷期のサバイバル術を語ってもらう。第1回目のテーマは震災で危ぶまれる派遣切りやリストラ。「職」をめぐる不安に我々はどう立ち向かうべきか、2つの選択肢を提示する。
「 シェアする 」派遣ユニオン書記長 関根秀一 郎さんの話
東京で、愛知で「大規模派遣切り」が進行中
非正規社員を襲う“6月危機”と“9月危機”
「このままだと、6月末には全国に失業者が溢れることになります」
派遣ユニオン書記長の関根秀一郎さんはこう予測している。
工場城下町として知られる群馬県伊勢崎市。ここには、派遣会社の寮として使われるワンルームマンションがかなりあるが、4月9日、関根さんが訪れてみると半分以上がガラ空きの状態だったという。すでに派遣切りは始まっているのだ。
「会社や工場が被災し、自宅待機を命じられている派遣社員は数知れない。その多くが近く失職に追い込まれる可能性が高い」と関根さん。1ヵ月、もしくは3ヵ月という細切れ契約が多いことを考えると、Xデーは震災の3ヵ月後、つまり6月末という計算になる。
しかも、これは被災地に限った話ではない。
「震災にともなう労働相談は東京が最多。愛知や埼玉、神奈川も多い。とくに大手自動車メーカー部品工場従業員からの相談が目立っています。
下請け部品工場が被災して稼働をストップすると、在庫がないから親請け工場も身動きが取れなくなる。まさに“ジャストインタイム”の弊害が出た格好です。部品の“ジャストインタイム”の流れがストップすると、人間の“ジャストインタイム”、派遣による労働力の調達がまっ先に止められる。
必要な時に必要な人材を、という派遣制度は、“必要がなくなればすぐ切れる制度”でもある。こんな制度を放置しておいちゃ絶対にダメだ」
被害は派遣社員にとどまらない。“6月危機”の次に到来が予想されるのは“9月危機”だ。半年契約をしている工場の期間工たちが大量解雇される危険がある。さらに来年春、そして再来年春には正社員のリストラが進む可能性もある。「最終的に失業者の規模はリーマンショックを超えるのではないか」と関根さんは見ている。