なんであんなことが言えるか知っていますか?私はあの人の目にあると思います。いつも目をしばしば、しばしばさせていますよね。だから、普通の人の半分しか現実を見てないんです」

 これがウケた。しかし、談志は何も言わない。「オレの友だちの悪口言いやがって。ただじゃおかねえ」などと言ってくれたらいいのに、そんな一言もなくて、ヒロは本当に生きた心地がしなかった。

 それから1週間ほどして、東北の方に談志と一緒に行った時のこと。オオトリの談志が、まくらでヒロのやった慎太郎ネタをそのまま語ったのである。

 ヒロと私の共著『安倍政権を笑い倒す』(角川新書)で、ヒロがその時のことをこう述懐する。

「私のネタをそのままやって、私以上にドカーンとウケているんです。その客席の笑い声を聞きながら、袖にいた私に向かって、ステージからふっとウィンクしたんですよ。もう、身体がとろけそうでした」

認める者には素直に頭を下げる

 談志には傲慢とかいうイメージもあるが、認める者には素直に頭を下げる。ヒロに対してもそうだった。

 立川談慶の真打披露パーティでヒロの芸を見た談志はヒロに、「おもしれぇな。初めて見たよ」と言ってくれ、その後、わざわざ、ヒロのライブを見に来た。行くと言ってではない。

 演目が終わって、ヒロが最後のあいさつをしていたら、後ろの方からトコトコとステージに向かって歩いて来る人がいる。談志だった。ヒロは泡を食った。

 ヒロによれば、右翼に駆け上がって来られては困るので、ステージに上がる階段ははずしている。

 しかし、談志は上がらせろという仕草をする。それで抱え上げるようにしてステージに上げ、ピンマイクを渡すと、いきなり、「オレはね、他人の芸を褒めたことがない。だいたい最近の芸人は何だ」と話し始めた。