「人材は会社にとって最大の財産である」と言われるが、多くの企業は「うちには人材がいない」と嘆いている。なぜ、このような事態に陥ってしまうのか。『儲かる会社は人が1割、仕組みが9割』を上梓した児島保彦氏に、企業が抱える「人材幻想」の問題点を聞いた。
幻想を追い求める経営者たち
「うちの会社には人材がいない」
「うちのような小さな会社には、いい人材は来ない」
こうぼやく社長は多いものです。特に利益が出ない会社では、社長の常套句になっています。
確かに企業の大小にかかわらず、「人材がいない」とよく言われます。中小企業においては「人材がいない、集まらない、育たない」の「3つのない」が挨拶がわりにさえなっています。
社長の誰もが人材を渇望しています。しかし、優秀な人材は金のわらじで探しても見つかりません。
私は大企業で営業、企画部門の役員を担当し、関係会社の社長を経て、65歳で経営コンサルタントとして独立しました。会社経営に直接携わった期間は、25年あまりになります。その間、あれこれと必死に試行錯誤した経験から、1つの結論に達しました。
それは、世の中に「いい人材」などいないということです。
「いい人材」とは幻想にすぎません。より具体的に言えば、「いい人材を手に入れる」または「いい人材を育てる」とは、そもそも無理な注文だと気がついたのです。