だから、冒頭の社長のぼやきは意味がありません。そもそも存在しないのですから、会社の業績が上がらない理由が「いい人材に恵まれないからだ」というのは、明らかにおかしな話です。

 そんなぼやきは、社長のないものねだりの言い訳にすぎません。人材がいないことを理由に儲からないと嘆き、「いい人材」をいつまでも探したところで、その社長は一生涯、人材に恵まれることはありません。現実を直視せず、幻想を追い求めているだけだからです。

 しかし、社長は利益を出して会社を継続させていかなければなりません。そこで発想を変えて、人材に頼らなくても利益を出すことを考えるべきなのです。

求める人材のレベルが高すぎる

 なぜ「いい人材」は存在しないのかを説明するために、まず「いい人材」とは、いったいどんな人のことを指すのか考えてみましょう。案外、具体的に条件をあげるのは難しいのではないでしょうか。

 もちろん、それぞれの会社によって求める人材の質は違うので、一律に語れないという側面はあります。しかし話を整理するために、「いい人材」とはどんな人なのか、明確にしておきます。

 企業の人材には大きく分けて2種類あります。1つは戦略や戦術を考える参謀の人材、もう1つは戦略・戦術を実行する現場の人材です。

 中小企業においては、会社の方向性を決めるのは社長の仕事なので、社長の方針に従って動くことが、「いい人材」の最低条件です。それはイコール「現場の人材」です。

 現場の人材に求められるのは、一言でいえばリーダーシップを持っている人です。利益を生み出すのは現場であり、利益を漏らして赤字を出すのも現場です。