いま、アルバイトの人手不足が深刻化している。そんななか、人材開発理論の専門家である中原淳氏(東京大学 准教授)と、インテリジェンスHITO総合研究所(テンプグループ)代表の渋谷和久氏が、アルバイト雇用に関する大規模な調査プロジェクトを立ち上げた。その成果をベースにした書籍『アルバイト・パート[採用・育成]入門』(ダイヤモンド社)も11月に刊行予定だという。
今回の座談会をお願いしたのは、「ハンバーガー大学」など独自の社内制度を早くから立ち上げ、店長やアルバイトの育成に力を入れてきた日本マクドナルドのみなさん。売上上位店である立川伊勢丹前店の齋藤周平店長と六本木ヒルズ店の西村裕美店長、そして同人事本部の日比谷勉氏にお集まりいただき、同社の驚くべき「人手不足対策」についてお話を伺った。いよいよハンバーガー大学の内部にまで迫る注目の最終回(撮影/宇佐見利明 構成/前田浩弥)。
今だから話せる
「店長」としてやらかした失敗談
マクドナルド立川伊勢丹前店店長。1989年生まれ。東京都出身。大学卒業後、2011年 日本マクドナルド株式会社へ入社。2015年 店長へ昇格。自らロールモデルとなり、人材育成に力を入れている。マクドナルド働くことで「成長」を実感しているクルーが多く、そのポジティブな雰囲気が定着に繋がっている
【中原淳(以下、中原)】前回の記事では、「マクドナルドの店長には『先生』としての資質も求められる」というお話がありました。そんなお2人ですが、店長として今までにやってしまった失敗談はありますか?
【齋藤周平(以下、齋藤)】私は「クレーム対応」で失敗したことがありますね。
以前、行き違いやちょっとした間の悪さも重なって、大きなクレームがお店に入ったことがありました。そのときに私は、最終責任者なのにもかかわらず、まずその場で収めようとして「言い訳」を考えてしまったんですね。そのせいで相手の方に熱が伝わらず、より一層こじれてしまいました。
その後、トラブルが起こったことを本社に伝えて、いろいろフィードバックをいただきました。もう一度決心し直して、ネクタイを締め直してもう一度相手の方のご自宅に伺い、解決しました。責任者として、絶対に言い訳をせず、誠実に対応することの大切さを学びました。
マクドナルド六本木ヒルズ店店長。1988年生まれ。兵庫県出身。大学卒業後、2011年4月 日本マクドナルド株式会社へ入社。2012年店長へ昇格。2016年より現職。クルーの提案や意見を取り入れて、「敬意ある職場」を実現することを心掛けている
【西村裕美(以下、西村)】私の場合は、チームのモチベーションに関わることですね。
店長に昇進したばかりのとき、「やってやるぞ」「成果を上げるぞ」とかなりガツガツしていたんですが、1人で突っ走ってしまっていて、なかなかスタッフを巻き込めていないことにちゃんと気づけていなかったんです。
その結果、あるときスタッフの1人から「お店の売上が上がっても、うれしいのは店長だけでしょ?」って言われてしまったんです。
それがすごくショックで……。だからいまでは、何か成果を出すんだというときに、クルーには「どんなメリットがあるのか」を伝えたり、得られるものを一緒に感じてもらったりするように意識しています。
【中原】お2人とも、苦い経験があるからこそ、「先生」としての今があるんですね。