大学生のインターンシップ先企業として、絶大な人気を得ているサイバーエージェント。その人事を統括する曽山哲人氏と、6月に刊行された『絶対内定2018 インターンシップ』の著者である熊谷智宏氏が、インターンシップの本質を突き詰めていく特別対談の後編。サイバーエージェントが「将来伸びる」と見込む人物像について、その共通点を探る。(構成/両角晴香 撮影/宇佐見利明)
「聞く力」と「受け止め力」がある人間は成長できる
熊谷 ここからは御社の採用基準について伺ってみたいと思います。言葉を選ばずに質問させていただくと、どんな人材を採用したいですか?
曽山 サイバーエージェントで活躍している人間像で言うと、「言うことは壮大、やることは愚直」な人に魅力を感じますね。このフレーズをセットで持っている人間は、キャラクターに関係なく活躍しています。
熊谷 なるほど。
曽山 あとは、チームプレーができるかどうか。もっと言えば「聞く力」と「受け止め力」を持っているかどうかです。弊社ではそれを呼称する「チームサイバーエージェント」という言葉をすごく大事にしています。
熊谷 どのように、それらの能力の有無を見抜くのですか?
曽山 例えば「サイバーエージェントが参入すべき新規事業を提案せよ」といったビジネスプランを考えさせることがあるのですが、そこで僕ら人事が見ていることは、誰かを蹴落とすのではなく、「チームで良いものを作ろう」というスタンスを持っているかどうかです。リーダーでも、フォロワーでも、そこはどちらでもいいです。「自分がほめられたい」、「できる人間に見せたい」とアイデアを通そうとする人は、見ていてすぐにわかりますよ。
熊谷 チームワークと「聞く力」「受け止め力」は、どのように関係しているのですか?
1974年神奈川県横浜市生まれ。上智大学文学部英文学科卒業。1998年伊勢丹に入社、紳士服配属とともに通販サイト立ち上げに参加。1999年、20名程度だったサイバーエージェントに入社。インターネット広告の営業担当として入社し、後に営業部門統括に就任。2005年に人事本部設立とともに人事本部長に就任し2008年に取締役就任。現在は「採用・育成・活性化・適材適所」など人事全般を手がける。社外にもブログやソーシャルメディア、著書による情報発信や人材マネジメントや組織活性化等、幅広いテーマで講演・教育活動も積極的に行っている。近著に「クリエイティブ人事 個人を伸ばす、チームを活かす」(金井壽宏・神戸大学大学院教授と共著。光文社新書)がある。
曽山 「聞く力」と「受け止め力」がある人間は、とにかく成長が早いんです。5人チームなら、5人分のブレーンを吸収できるということです。スタート時点の能力が低かったとしても、この先ずっと成長し続けることができる。
逆に、天才肌の人間でも、「聞く力」を持っていないと、ある一定のところで急速に成長のブレーキがかかってしまいます。人の意見を聞き入れ発展させる能力がないと、たった一人のブレーンでしか力を発揮できないということです。「あいつは頭が良い」と、同級生が一目置くような学生でも、プライドが高いと人の意見を素直に受け入れることができませんよね。
熊谷 参加当初は「聞く力」や「受け入れ力」がなかった学生でも、インターンを通じて、その力を得ることはありますか?
曽山 もちろんです。新規事業のアイデアが最初から革新的な人なんてほとんどいません。でも、発想法やマネジメント視点は、トレーニングすることができます。アイデアを出すプレゼンでビリになったら、嫌でも自分の能力を思い知らされますから、そこで謙虚な気持ちを持つことができれば、「聞く力」「受け入れ力」は、自然と身についていきます。
熊谷 そこで人間力が問われるわけですね。
曽山 限られたインターン期間中で、どれほどの先輩社員に「聞きに行く力」があるか。ダメだしされても、何回でも先輩のところにアイデアを持って行けるか。羞恥心を捨てて、自分からぶつかりに行けるか。とても大事なことです。
インターンには何度でもエントリーができるので、1回目はビリになり、2回目にチームプレーを身に着け、3回目に優勝、その後内定、みたいにステップアップしていく学生もいますよ。
熊谷 自分の等身大の能力と向き合って、健全な挫折ができる。素晴らしい体験ですね!
曽山 就職活動は、自分の才能を開花させる、すごく成長できる機会です。やればやるだけ成長できるので、企業のサポートをフル活用すべきだと思います。
熊谷 同意見です。『絶対内定』の冒頭にも書いていますが、今の自分に自信がない学生ほど、成長できる可能性が高いと思うんです。自分に対して問題意識を持ててこそ、成長があります。御社のインターンシップを経験することで、成長の可能性はすごく広がりそうですね。