安定した電力供給力を持つがゆえに、日本は“スマートコミュニティ後進国”だった。だが、原発事故で事情は一変した。価格メカニズムと頭脳的電力網で節電を進める社会の構築が不可避だ。 (「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)
AM3:00──。電気料金が1日で最も安い時間帯に入った。あらかじめ設定したとおりに、洗濯乾燥機が自動的に回り始めた。乾燥機は電気を食う。日中の電気料金が高い時間帯に、洗濯などしない。
PM4:00──。電気料金が最も高い時間帯が過ぎた。冷蔵庫が稼働し、オレンジジュースを3度になるまで冷やしてくれる。
電力を効率的に消費し、最もコストを低く抑えるシステム──これは未来図ではない。現在、ドイツで進められているスマートコミュニティのひと幕だ。
図3‐20のように、スマートコミュニティとは家庭やオフィスビル、工場などをIT化された電力網で結び、風力や太陽光など発電量が不安定な自然エネルギーを制御しながら、コミュニティ内に分散設置された蓄電池を活用して、効率的にエネルギーを消費する都市を指す。基幹となるIT化された電力網を、スマートグリッド(次世代送電網)と呼ぶ。