4月1日、日産自動車で17年ぶりに日本人社長が誕生する。カルロス・ゴーン会長が社長とCEO(最高経営責任者)の職を西川廣人副会長に譲るのだ。依然としてゴーン氏がグループ総帥として君臨することから、「大勢に影響なし」との見方が根強いが、ゴーン氏が社長交代に踏み切った裏事情も透けて見える。 (「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子、山本 輝)

「社内の空気は、静寂を保っていた。まるで何事もなかったかのように──」(日産自動車幹部)

 2月23日早朝、日産は電撃的な社長交代を明らかにした。カルロス・ゴーン氏は会長として続投するが、社長ポストに日本人が就くのは17年ぶりのことだ。

 社長交代といえば、企業の将来を方向付けるビッグイベントである。にもかかわらず、日産社内の反応は冷静そのもの。晴れやかな新社長お披露目会見もなかった。

 社内外の日産関係者の見立ては、「今回の体制変更では何も変わらない」だ。依然として、ゴーン氏は、日産、仏ルノー、三菱自動車などの“グループ総帥”としてルノー・日産アライアンスの会長兼CEOの座に君臨するからだ。

 もっとも、日産社内の「静寂」には取り繕った側面があることも見逃せない。別の日産幹部は、「冷静を装っても内心穏やかでいられないのが、外国人幹部たちだ」と打ち明ける。

 いまや、日産の常務執行役員以上のポストに就く49人の幹部のうち20人を外国人が占める。彼らは、カルロス・ゴーンというカリスマ経営者を慕って入社した、野心あふれる“お雇い外国人”だ。

「これまで、ゴーン氏の虎の威を借りて業務を進めてきた外国人幹部たちが、今後、西川(廣人)新社長に承認を得る場面が格段に増える」(別の日産幹部)

 西川氏は、「リーダーというよりも実務家。経営に関わる事細かな数字を全て把握しているので、外国人幹部への要求も厳しい」(同)ため、外国人幹部の士気低下が人材流出を招きかねない。

 地味な社長交代には、そのあたりの事情をくんで「むやみに事を荒立てたくない」という西川氏の心情が働いているのかもしれない。17年ぶりの日本人社長復帰といっても、「日本人」に懐古的な意味合いはなく、ゴーン流を踏襲した数値目標で管理する経営は受け継がれることになる。

 では、ゴーン氏が社長交代を決断したのが、なぜ今だったのか。