「企業人自身が利益について基本的なことを知らない。そのため彼らが互いに話していることや、一般に向かって話していることが、企業の本来とるべき行動を妨げ、一般の理解を妨げる結果となっている。利益に関して最も基本的な事実は、そのようなものは存在しないということである。存在するのはコストだけである」(『すでに起こった未来』)
営利事業という言葉がある。そのため、事業の目的は利益にあると思う。加えて、利潤動機という言葉がある。そのため、事業の動機は利益にあると思う。
こうして、利益が事業の目的であり、動機であると思ったとたんに、経営者自身の姿勢がおかしくなる。本業で汗水を流すよりも財務的な操作で利益を上げることに魅力を感じる。同じく、経営幹部の行動もおかしくなる。こうして、利益至上主義が社内に蔓延する。
ドラッカーは、利益は目的ではないし、動機でもないという。利益とは、企業が事業を継続・発展させていくための条件である。明日さらに優れた事業を行なうためのコスト、それが利益である。
利益がなければ、コストを賄うことも、リスクに備えることもできない。社会が必要とする財・サービスを提供できず、人を雇用することもできない。したがって、利益を上げることが企業にとっての第一の社会的責任である。
「利益と社会的責任との間にはいかなる対立も生じない。真のコストをカバーする利益をあげることこそ、企業に特有の社会的責任である」(『すでに起こった未来』)