896自治体が人口減によって「消滅」する可能性

 隆盛を誇った石炭産業が消えるとともに夕張市の沈下は始まった。1980年代から、「炭鉱から観光へ」のスローガンを掲げてリゾート政策に突き進み、めろん城やホテルなど様々な観光施設を建て続け、巨費を投じた。それが功を奏さないまま、借金隠しもあって年間予算の3倍超、353億円の累積赤字を抱え、2006年に自治体「倒産」に追い込まれた。

 2007年3月に財政再建団体(現在の財政再生団体)に指名されて国の管理下に入り、20年計画で借金返済を求められる。予算編成は無論、細かい施策の一つ一つに国の同意が必要となった。

 再建開始前の06年には約1万3000人だった人口は8600人に減少している。なかでも40歳未満のファミリー層や若年層がほぼ半減した。教育や子育て環境の不安からだ。そのため高齢化率が49%に高まり全国でもトップクラス。市民の半数が65歳以上となった。

 人口が減ると商工業も衰退する。商工会議所の会員が10年前には316だったが、今や半減。シチズン時計やツムラ、マルハニチロなどの勤務先も少なくはないが、子育てを考える段になると去っていくという。

 過去の負債を現在の市民に強いることでひずみが生じた。究極のひずみが人口減として現れ、現在進行形でもある。この道しか選択肢はなったのだろうか。

 夕張市が歩んだ道は、今後、多くの日本の地域で起こる可能性が高い。有識者を集めた「日本創生会議」は、全国の半数の896自治体が人口減によって「消滅」する可能性があると推計している。

「わが町もゆくゆくは……」と不安に駆られた多くの自治体関係者が夕張視察に相次いで訪れている。「再生」への糸口を見いだせるのかを知りたいためだ。財政再建一辺倒から路線転換した夕張市が一段と注目が集めそうだ。