今年もスギ花粉症の人にとって憂鬱な季節になりました。花粉症は、日本人の四人に一人、都市部では三人に一人が悩まされている「国民病」です。QOL(生活の質)を維持して、花粉シーズンを乗り切るにはどうすればよいのでしょうか。症状を緩和する方法や、唯一の根治療法として注目されている舌下免疫療法などについて、花粉症のエキスパートであるながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニック(東京都品川区)の永倉仁史院長に聞きました。
スギ花粉症患者の8割はヒノキ花粉症も発症
花粉症(季節性アレルギー鼻炎)はアレルギー性疾患の一つで、特定の植物の花粉に対して起こる免疫反応(アレルギー反応)です。免疫は体内に入った細菌やウィルスなどの異物を排除する防御システムです。本来、危険ではない物質を異物として認識し、体外に排除する際に起きる症状をアレルギーといいます。
アレルギーの原因となる物質が「アレルゲン(抗原)」です。抗原(花粉)が鼻から侵入し、鼻粘膜まで達すると、それを除去する働きを担う物質「抗体」(IgE抗体)が体内で作られ、アレルギー症状の原因となる化学物質(ヒスタミンなど)を内包するマスト細胞にくっつきます。再び抗原が体内に侵入すると、マスト細胞にくっついたIgE抗体と結合。化学物質が放出され、アレルギー反応が起こります。くしゃみや鼻水などの症状こそが、このアレルギー反応なのです。
花粉症を発症する植物は、実に60種類以上。日本では戦後、積極的にスギの植栽が行われたものの、海外から安価な木材が輸入されたために伐採されず、樹齢30年を超えたため、スギが大量に花粉を飛散するようになりました。スギ林は国土の12%を占めます。日本の花粉症患者の70%がスギを原因とするのもそのためです。
日本で花粉症の原因となる植物で多いのはスギの他に、ヒノキ、ブタクサ、イネ科、シラカバなど。共通の抗原性を持つスギとヒノキの花粉は電子顕微鏡で見ても見分けがつかないほど似ているため、スギ花粉症を発症している人の8割がヒノキ花粉症にも発症していると言われます。