そして、それこそ預貯金には逆の現象が起きる。お金の価値が急落するのだ。預貯金の価値も急落する、ということである。お金の価値はインフレになれば減るのだ。

 今の金額が、将来も同じ価値を持つとは限らない。インフレで物価が上がれば、同じお金で同じものが買えなくなるのである。お金の価値が下がってしまうのだ。これが、大きなスケールで起きる可能性があるのだ。

 そのインフレはどのくらいの規模になるか。借金の額によっては相当なものになるかもしれない。ヘタをすると3割、5割と減るかもしれない。

 そして、そんなことになってしまったのは、おそらく誰のせいでもない、という事態になるのだろう。なぜなら、国というものには実態がないからだ。なんとなく痛み分けしておしまい、ということになるに違いない、と松本さんは読む。

「誰も責任を取りようがないからです。なぜなら、最終的な当事者は国民だからです。責任は国民全員にあるんです。日本はちょうど、その国土の広さくらいの存在感の国になるのかもしれません。一人当たりGDPは30位くらいまで落ちる。誰も覚えていないくらいの順位の国になる。円安でもう海外旅行はできないでしょうね。輸入車も海外のブランド品もとんでもない値段になるはずです。それこそ30年前、1970年代の水準まで落ちていくんじゃないでしょうか。うまいものも食えなくなる。最高級の魚も、その頃は大国になっている中国に全部輸出されてしまうでしょうし。ただでさえ、食材が減っていく中で」

 金融自由化に踏み出すきっかけとなった日本の危機は、今なお、解決していないのである。

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この連載は『預けたお金が問題だった。』(上阪徹著、ダイヤモンド社刊)を基に構成されています。

日本のお金の流れは おかしい!
そのツケは 若い人が負わされている。
素朴な疑問をきっかけに、金融の民主化というビジョンを描き、自分たちの手で、自分たちのための金融機関をつくった松本大とその仲間たちの挑戦と現在。  

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