銀行預金や郵便貯金といった「間接金融」には重要な役割がある。個人にとって必要な機能もある。だが、何も考えずに「とにかく預貯金さえしておけば、自分のお金は安泰だ」「預貯金をしておくことこそがお金にとって重要だ」という発想は、実は極めて危険なものだということに、気づいておく必要がある。何も知らず、何も考えずに「とりあえず預金」という行動は、国の借金を増やし続けていくという、実はかなり恐ろしい事態を引き起こしかねない、ということである。
厳しい円安とハイパーインフレで没落する前に
では、もし間接金融が直接金融にうまくシフトできず、このままの状態で進めば、国はどうなるのだろう。
もちろん、国は借金を増やしたくて増やしているわけではないかもしれない。だが、不況で税収が減り、予算をつくるためには国債を発行するしかない。もし、国債の買い手がいなければ、発行を躊躇する可能性も出てくるのかもしれないが、預貯金が増えている現状では、郵便貯金や銀行がどんどん国債を買ってくれる、という構図がある。
では、このまま行くとどうなってしまうのか。借金が膨れ上がり続ける。そしてそれが、今の若い世代以降に残されていく。今の予算を組むための借金が、次の世代につけ替えられていくのである。だが、やがてそれは立ちゆかなくなる、と松本さんは見ている。
「借金があっても、返せる労働力があればいいんです。ところが、日本は少子高齢化が進みます。労働力人口は減っていくんです。そして、日本は人口も減っていく。消費税が上げられるうちはまだいい。でも、それでも立ちゆかなくなれば、いずれは国としての評価に世界が疑問符を付けるでしょう」
だから、まずは為替が暴落する、と松本さんは最悪のシナリオを描く。円安だ。そうなると、待っているのは強烈なインフレ、ということになる。猛烈な円安が進行すればどうなるか。海外からモノを買うのに、これまで以上の円が必要になる。円高になると、海外旅行でモノが安く買えるのと逆の流れが起きる。だが、買い物の次元の話ではない。日本はあらゆるものを外国から輸入している。食糧でさえ、自給率は四割程度なのだ。円安になれば、あらゆるものの価格が高騰することになるだろう。まさにハイパーインフレである。
「しかも、実は国にとっては、これは都合がいい事態でもある、ということも知っておくべきだと思います。お金の価値が落ちるということは、借金の価値も落ちるということだからです。実質的に、借金をぐっと圧縮できるわけです」
まさか国がそんなことを……と考える人もいるかもしれない。しかし、松本さんはいつもこう考えている。〝世の中でこれが正しいとされていることや、立派だと思われていることが、本当だとは限らない〟。むしろ国は、それを望むようになるかもしれないのだ。