前回は、預金金利の話から始めて、日本では個人のお金が虐げられているのでないか、その背景は何か、を考えてみた。今回は、銀行や郵便局に預けた個人のお金が、どのように使われているのかを見ながら、国の借金と個人のお金のいびつな関係を明らかにしたい。

 私たちが自分のお金を銀行や郵便局に預ける。そのお金はどのように使われているのだろうか。

 松本さんが、こうした個人のお金について、最初に疑問を持ったのは、マネックスを創業する前、投資銀行のゴールドマン・サックスにいた頃、バブル崩壊後に不良債権を売買するビジネスを手がけたときのことだ。

 不良債権は、たしかに銀行にとっては不良の債権だった。けれども、銀行にとっての〝不良〟は、松本さんにとっては〝不良〟ではなかった。たとえば、担保になっていた土地は、担保価値以上の融資が行われていた。だからこそ問題だったのだ。だが、実際には、その土地の価値が市場価値でゼロになったわけではなかった。

 松本さんは、買い取った後にマーケットで売り出す。破格の値段で買った土地が、通常の取引価格で売れた。この売却が大きな利益を出すことになる。

 そして、このとき、意外な発見をすることになる。

「銀行から買うわけですから、当然、銀行がどういうものを持っているか見にいく必要があるわけですね。でも、実はそれまで僕は、銀行のバランスシートなんて、詳しく見たことがありませんでした」