これまで、日本のお金のいびつな構造の問題点とその歴史的な背景を見てきた。そして、日本にも、お金の流れを変えようという動きはあったことを述べた。その先鞭をつけたマネックスの創業、それに続くオンライン証券の登場によって、日本の金融市場は変わったのだろうか。
日本人は投資に向いていないのか?
実は賢い日本の個人投資家
マネックスには130万件弱の取引口座がある。オンライン証券全体でも約590万件になる。オンライン証券が誕生していなかったら、もしかしたら増えなかったかもしれない口座数。そう言えるかもしれない。だが、それでも世の中を変えるには至らなかったのか。松本さんは言う。
「口座をつくっていただいた個人投資家と言われている人たちの投資リテラシー、金融リテラシーは、大幅に上がったと思います。また、僕たちの提供するサービスや商品、ツールや教育的なコンテンツも飛躍的に充実させることができたと思う。この10年間で、日本の株の取引形態は大きく変わったんです。個人の株の売買のゆうに過半は、オンライン証券が扱っているわけです。でも一方で、日本全体で、あるいは個人個人の総体で、金融や投資に対するリテラシーが上がったのかといえば、そうとは言いきれない」
日本ではさまざまな金融政策が行われているが、残念ながら1400兆円の個人金融資産をダイレクトに動かす政策はほとんどない。政治家は、選挙を恐れているのか、相続税を高額にする、あるいは生前贈与を無税にするなど、塩漬けになったお金を動かすための大胆な施策にはなかなか踏み出せない。
結局、金融自由化によっても、大きな山は動かなかったのだ。たしかにオンライン証券の登場など、新しい動きで投資家は増えた。だが、〝あるべき姿〟にはほど遠い状況で終わってしまっているということである。