患者の負担増をいう前に
医療の無駄の削減を

「この結果から医療費の高騰を効果的に抑えるには、これまでのように病院側の要因に介入するだけでなく、医師個人の診療パターンに焦点を当てるべきだということが分かります。多くの検査をしたり高い薬を使っていても、それは患者さんのためになっていない可能性があります」と津川氏は指摘する。

 従来、米国では高騰する医療費を抑えようと公的医療保険、民間医療保険を問わず、支払い元が病院に厳しい基準を課し、パフォーマンスに応じた支払いを徹底してきた。

 例えば、入院後30日以内の死亡率や再入院率が明らかに高い病院に対しては改善勧告が繰り返され、改善の兆しがない場合は償還率の引き下げや支払い拒否という事態もありうる。さらに2017年からは、医師個人の診療パターンや治療成績を評価し、それによって支払額が増減する仕組みも導入された。今回の結果は、その流れを後押しするもので、今後は医師個人の「腕」を評価する基準作りが進むだろう。

津川友介さんと中室牧子さんによる『「原因と結果」の経済学 データから真実を見抜く思考法』(ダイヤモンド社)が2月17日から発売予定。208ページ、1728円(税込み)

 さて、破綻寸前とはいえ皆保険制度下にある日本はどうだろう。米国民ほど痛切ではないが、日本でも医療費負担が家計を圧迫している。津川氏は「今、日本でも高齢者の自己負担額の見直しや健康保険料の増額が議論されていますが、今回の結果は医師の診療パターン次第でアウトカムを損なわず医療費の無駄を減らせる可能性を示唆しています。国民の負担増をいう以前に、かぜに抗生剤を処方すると言った医療の無駄を減らすことが先決だと思います。」という。

 とはいえ、日本ではようやく昨年4月から、日本版HTA(医療技術評価)が試行導入され医薬品と医療機器の費用対効果に関する評価が始まったばかり。診療プロセスの費用対効果や医師個人の診療パターンの評価なんて何年先になるかわからない。関連団体の猛反発は必至だろうし……。

 とりあえず、個人的に医療の無駄を削減するには、目の前の医師とコミュニケーションをとり、検査や投薬の目的をしっかり聞き取ること。「入院したついでだから、あれもこれも検査しておきましょうか」なんて甘言にノッてしまうと、お財布にも健康にも悪い可能性がある。