ただ、欧米では、社会に風穴を開ける存在だったり、社会の仕組みを別の角度で見る存在だったり、アーティストの社会的役割が確立されています。だから、アーティストの意見を聞いてみようという考えが浸透しているんです。アーティストビザなど、社会制度もしっかりしている。

 国際的な写真フェアであるパリフォトによく行っているのですが、プリント販売のマーケットもしっかりしている印象を受けます。写真がアートとして認められていて、コレクターもたくさんいます。一般公開の前に、コレクターが見る日が設けられていて、フランス人以外にも、中東の人とかもけっこういますね。

自分の好きなことをするには
パトロン的な存在が必要

――現在は、芸術表現と商業写真のバランスはどう取っているのですか?

 現在の収入は、作品販売と、支援してくれているアウトドアメーカーの広告撮影。雑誌については、限られた媒体とだけ仕事しています。広告撮影も、雑誌撮影も、自分の作家性を犠牲にしないものを選んでいます。作品作りと商業的な仕事のバランスを取るのは、とても難しいことです。ただ、自分のぶれないところで商業的な仕事をするなら、その経験が作品作りに返ってくることもあります。

 今度はアラスカへ3週間撮影に行きますが、広告の仕事もやりながら、メインで作品作りもする。その境界は曖昧です。そうすれば、交通費などは出してもらえます。ある程度は、人のお金を自分に投資していく術が大事です(笑)。収支を考えてたら、良い物は作れないです。

 結局は、作品作りでも、商業的な仕事でも、人とのつながりが大切なんです。なので、勝手に「この人は俺のパトロン」だと思いこんで、自分の世界をゴリ押しすることが大切です(笑)。今興味があるテーマがあれば、「これはあの編集部で取り上げてもらおう」とか。多かれ少なかれパトロンがいなければ、自分の好きなことなんてやり続けられません。早いうちから、パトロン的な存在を見つけておくことが大切だと思います。

――芸術表現を続けるために、精神の自由を大切にしている印象を受けます。

 突破する物にでないと、エネルギーは生まれないと思っているんです。なので、デレビでも雑誌でも、すでにビジネスモデルができている物には、あまり魅力を感じないんだと思います。不可解でよくわからない物にエネルギーを感じ、影響を受けて、今の仕事を続けているので、誰もやっていないことをやっていきたいんです。まあ、好きなことをやっているだけなんですけどね(笑)。

石塚元太良(いしづか・げんたろう)
写真家。1977年東京生まれ。8×10などの大型フィルムカメラを用いながら、ドキュメンタリーとアートの間を横断するように、時事的なテーマに対して独自のイメージを提起している。近年は氷河、パイプライン、ゴールドラッシュなどをモチーフに、アラスカやアイスランドなど、主に極地方で独自のランドスケープを撮影。4月11〜16日に写真展「panorama」を開催