20世紀は「経済の時代」
21世紀は「文化価値の時代」

 私は、20世紀は「経済の時代」、21世紀は「文化価値の時代」だと考えています。モノを作れば売れた20世紀から需要と供給の関係が逆転し、基本的にモノもコトも、今以上になくてもいい時代になりました。何が欲しいか人に聞いても「特に要りません」と言われる時代。自分たちなりに提供する価値があると思うものを内側に持っていなければ、スタート地点にすら立てません。

 次に「作品と商品」にいってみましょうか。アートが特殊なのは、必ず独自性が求められることです。でもそれは本来、商品の方にもあってしかるべきもの。基本的に何でも安価で手に入る現代において、それでも「欲しい」と思ったり魅力を感じたりするものは何なのか。それこそ生み出す側がひねり出してきた価値、これだったらお金を掛けてでも手に入れたい、というモノでないと、人からは求められません。作品でも商品でも、価値そのものを生み出すことが必要だということです。

 さらに「モチベーション」に関して。20世紀はとにかく、「売れる」とか「拡大」とか成長自体に、価値や喜びを感じ得た時代でした。でも今は、作れば売れる時代ではなく、私の見立てからすると、やってうまくいくのが3割、失敗するのが7割という感覚でビジネスをした方がよい。

 そうした中で、最初の動機付けや商品そのものの魅力などにある種のプライドがないと、続けていくことができません。熱量というのでしょうか、何か突き動かされるような感覚。それがすごく大事で、リスクや負担を超えて、ある地点まで行ってみたからこそ見える景色がアートにもビジネスにもあるわけです。

 そこで本当にいい価値を提供し、お客さんに喜んでもらえる関係があってこそ作り手のモチベーションにつながります。アーティストもそうでしょう。当然、最初からお客の言いなりで作品をつくることはないにしても、アートとて独り善がりではなくお客がいてこそ存在し得ます。

──企業としてアート活動は今後も続けていきたいですか。

 継続したいですね。今の会社では、新しいことを始める際に四拍子(やりたいということ、必然性、意義、なかったという価値)を求めていますが、これらはアーティストが作品をつくる活動とそのままかぶっている気がします。企業がアート活動をする合理的な理由は説明しづらいですが、何か価値そのものを追求する(世界の)大きな流れのような感覚に、従っているのかもしれません。