「危険運転致死傷罪」の適用は稀
残された遺族の無念は晴れず

 ただし、現実の裁判においては、この「危険運転致死傷罪」が適用されることは稀なのだという。

「私が過去に取材したケースですと、11年、名古屋で無免許、無車検、無保険のブラジル人の男性がテキーラでショットグラスを6杯、生ビールを中ジョッキで3杯くらい飲んだ後、自動車で前車に追突。その後も一方通行を逆走し、自転車に衝突する事故を起こしました。自転車に乗っていた男性は衝撃で吹き飛ばされ、病院に搬送され死亡。犯人のブラジル人男性は事故後も1時間ほど逃走してから逮捕されました」(柳原氏)

「非常に悪質な事件だと思いますが、犯人のブラジル人男性には懲役20~25年の刑罰で処罰できる危険運転致死傷罪は適用されず、より軽い自動車運転過失致死罪(最高刑は懲役7年)で起訴されたのです。検察は『無免許でも長い間、クルマに乗っていれば技術があると言えるし、また、逮捕後、犯人が片足で立てたから飲酒運転ではない』などとして、危険運転の構成要件を満たしていないと判断したようです」(同前)

 交通法規の罰則は強化され、それ自体が抑止力になっている面はあるだろうが、現実の悪質な事件に適用されないのでは、遺族は納得できないだろう。

 また、最近の交通事故の傾向として、高齢運転者が関与した交通事故が増加傾向となっている。特に問題なのが認知症の運転手が起こす交通事故だ。

「最近のニュースを見ていると、信じられないような事故のドライバーが認知症の高齢者だったというケースが目立っています。昨年、横浜市で通学中の小学生の列に軽トラックが突っ込み、男児1人が死亡するという事故がありました。ところが検察は、逮捕された88歳の運転手について、『認知症の影響で長時間運転を続けた結果、運転能力が失われていた』として、先月、運転手は嫌疑不十分で不起訴になりました」(同前)

 こうした事件は、今後ますます増えていくことが予想されている。行政側も対応を進めており、今年の3月12日に施行された改正道路交通法では、75歳以上の運転免許保有者に対し、3年ごとの免許更新時に認知機能検査を行うことが義務付けられた。

「認知症の人には運転させないという方向に向かっているようですが、これで対策が万全というわけではないでしょうね」(同前)