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格安の西成グルメも
ホームレスには高嶺の花
今、西成には、この若い世代の彼、彼女らが喜びそうな飲食店もいくつか存在する。ジャズバーやクラシック音楽バーもある。なかでも人気は西成警察署近くにあるカレー店「薬味堂」や、居酒屋兼ライブハウス「難波屋」だ。2日間煮込んだというカレーが人気の「薬味堂」は、大阪の下町らしく牛筋肉の煮込みが入った「どてカリー」が600円、コーヒーが300円だ。
“投げ銭ライブ”で知られる「難波屋」では一推しメニュー「肉豆腐」は250円、「焼きそば」も同じく250円で提供している。大阪市内の他地域に比べると若干、安い。いわゆる“西成価格”での提供だ。それにしても、なぜ西成の飲食店は安価での商品提供が可能なのか。地元飲食店主のひとりがその内情を明かしてくれた。
「地代が安いからとちゃうかな?代々、受け継いだ家・土地やったり、借地や借店舗でも、キタやミナミとは比較にならへん。それにいくら安いゆうたかて、下手なもん出したらお客さん来てくれへん。大阪のなかでも、みんな顔見知りの地域やさかい、おかしな評判が立つと困るんや。だから美味いもんを安く出すしかないんや」
もっとも、こうした「安くて美味いもん」を、西成に集うホームレスや日雇い労働者が口にすることは滅多にないという。
「あの人たち(ホームレスや日雇い労働者)は、自販機の酒とコンビニ廃棄の露天商から買ったもんだけやろう。それか、せいぜい立ち呑み屋やな」
一般人には格安でも、やはりホームレスや日雇い労働者には手の届かない「高級グルメ」なのだろう。では、どんな人たちが西成の飲食店に立ち寄っているのだろうか。
「昔からここに住んではる人や。地の人(地元の人という意味)が多いな。商売してはる人もおれば、サラリーマンの人もおるし、生活保護受けてはる人とかかな。年金生活の人もいてはるけど。それ以上に、今も昔も、外から来てくれはる人やな」