『もしドラ』の刊行にはいろんなドラマがありました。前回は、著者・岩崎さんとの出会いについて語ってもらいました。今回は、あの装丁が生まれた経緯を聞きます。斬新だったライトノベルのような装丁は、編集担当の加藤君がアニメ好きだったからではありませんでした。曰く「萌えは現代の浮世絵」だとか。

幻のタイトルは、
「ドラッカーと甲子園!」?

――原稿のやりとりは順調だった?

加藤 著者の岩崎さんは、スケジュールをいつも守ってくださる人だったので大変助かりました。原稿の催促などほとんど必要ありませんでした。

 現在の本の元になった原稿を受け取ったのは、2009年の1月でした。メールで送っていただいたものをプリントアウトして読んだのですが、かなり面白い内容で興奮しましたね。読後の感想を岩崎さんにメールで送ったのですが、「10万部とか20万部とかそういうラインをねらって仕上げたいですね」と書いています。相変わらず、岩崎さんのおっしゃっていた200万部とかはまったく言ってないんですけど。でも面白いことに、「これはたしかに、映画化できるかもしれませんね」とも書いてありました。6月4日に映画が公開になりますから、感慨深いですね。

――原稿の形が出来上がってきたのは?

加藤 6月くらいにはほぼ固まっていたんじゃないでしょうか。その頃から書名を真剣に考え始めました。

――書名の字数はあまり例がないほど長くなったが?

加藤 書名は相当悩みました。結論から言うと、この書名は岩崎さんがブログに書いたもとの記事とまったく同じです。でも当初はそれとは変えようと思っていました。一般論ですが、書名というのは内容を正確に表現しつつ、できれば短いものがいいのです。長いタイトルは書店の店頭で目に飛び込んできにくくなります。いつもは「1秒で認識できる」ということを目指してつくるようにしています。

 だから『もしドラ』では、いろんな短くしたタイトル案を考えました。たとえば「ドラッカーと甲子園!」とか、そういうものをたくさん考えました。それから「マネジメント」を外して『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーを読んだら』としてみたり。いや、ほんとにそういうのにしなくてよかったと思います(笑)

 著者の岩崎さんとしては「高校野球」「女子マネージャー」「ドラッカー」「マネジメント」という4つの単語はすべて必要で、タイトルはこれしかないとおっしゃっていました。ぼくも最後には納得して、これだけ長いタイトルなんだから、逆手にとって面白く見せる方向でいこう。おかげで、略称の「もしドラ」を広めることもできたし、よかったですよね。