萌えのイラストを描く動画を見て、
「ダ・ヴィンチみたいだ」と感動しました。

――それは装丁との組み合わせで面白い表現ができると?

『投資銀行青春白書』。『もしドラ』の萌え要素の源流はここにある?

加藤 そうですね。書名を考えるときは、常に装丁デザインもいっしょに考えるようにしています。今回は岩崎さんとの最初の打ち合わせの段階から、こういう萌え系のイラストで行こうと話しあっていました。

 ぼくは以前、保田隆明さんの『投資銀行青春白書』という本を編集したんですけど、これも萌え系のイラストだったんです。それで、今回の本のテーマは、ドラッカーともう一つのテーマが高校野球の女子マネですね。このふたつの、かなりかけ離れたものを融合させるには、萌え系のイラストが最適ではないかと思いました。

――それだけ、萌えやイラストに精通していた?

加藤 いえ、いわゆる萌えとかアニメの世界にくわしいということはぜんぜんないです。ぜんぜん知らない方だと思います。ただ僕は、萌えって本当に凄いと思っているんですよ。「現代の浮世絵」みたいなものではないかと考えています。

 萌え絵は、日本ではずっとサブカルチャー扱いされていますが、海外では認められてアートシーンに登場するほどメジャーになってきていますよね。それから日本でも次第にメインストリームに出てくるようになってきました。これは浮世絵で起こったことと似ているのではないかと。

 浮世絵の出てきた江戸時代って、経済的には200年間ゼロ成長だったんですよね。しかも社会制度は年配者が中心となって仕切るがっちりとした体制でした。いわばずっと安定した不景気で、仕事やポストの流動性が低い。実質的な失業者も相当多かったはずです。とりわけ仕事がないのは若者で、そうなると若者は暇になります。若者に時間ができると、文化が盛り上がる。これって、ここ現在の日本のこの20年とすごく似ていると思いませんか。

――面白い発想だけど、以前からそんな風に考えた?

加藤 あとはネットのおかげですごいものを共有することができるというもの大きいですよね。だからみんなが進歩する。たとえば「ニコニコ動画」に「描いてみました」というタグがあるんですが、そこで神業かと思う絵師の人の動画が出ていたんです。INOさんという方の有名な動画「イヤースピーカー描いてみた」なのですが、これがとにかく凄い。ヘッドフォンをした女性をCGで描く様子を早回しで見せてくれるのですが、洋服の質感や陰影だけではなく、髪の毛の一本一本まで詳細に描いていきます。表面的な皮膚だけではなく、骨格から筋肉まで意識してリアルに描きこんでいく。僕はそれを見て「まるでダ・ヴィンチみたいだ!」と感動したんです。


※この動画は、YouTubeでも視聴することができます(前編後編

 

――それは凄い!

加藤 ですよね。ニコニコ動画のリンクで、すぐにその方の画集を買いました。で、後日届いたものを開いたら、かなり強烈で会社で見るのが憚れるような内容だったんですけど(笑)。でも、この絵は世界レベルだなと思いました。