首都圏の飲料自動販売機が“輪番”停止する日が間近に迫っている。清涼飲料メーカー82社が加盟する全国清涼飲料工業会(全清飲)は、政府の要請を受け、7月1日から東京電力管内で自販機を所有する各社が25%以上の節電を行うことを決めた。
各社で設置エリアや契約形態ごとにグループ分けを行い、輪番で冷却運転を停止したり、一部で稼働を休止する。もともと、自販機は節電対策として電力ピーク時の13時から16時までは冷却運転を止めていた。今回はさらにその前後で、冷却停止時間を延長する。この措置で最大で6時間冷却が止まる自販機も出てくることになる。
運転停止中も販売はできるが、1時間冷却を停止するごとに庫内温度は1度上昇するといわれている。屋外の自販機で夏場に冷たい飲み物を買えなくなる可能性は高くなる。7月の本格適用に備え、6月中に停止を行うメーカーも出ている。1年で25%もの電力削減を行った例は過去にはなく、売り上げへの影響は未知数だ。
小売り店で特売されることが大半の清涼飲料を、定価で販売できる自販機は貴重な収益源。売り上げに占めるシェアも、キリンビバレッジで31%、サントリーホールディングスで34%と高い。震災後の商品供給力が完全には戻っていないなか、首都圏の自販機の販売減のインパクトは大きそうだ。
節電をめぐり“鞘当て”も起きている。全清飲で業界全体の目標値が設定された後、日本コカ・コーラは、他社よりも高い33%の節電を行うと発表。「業界トップ企業として最大限協力する。また、エリアのグループ分けの都合上33%のほうがやりやすい」(日本コカ・コーラ)とするが「そこまでの節電には対応できない企業も多い。高い目標値を設定して企業アピールに利用する魂胆が見え見え」(大手飲料メーカー)という恨み節も聞こえる。業界全体を巻き込んだ前代未聞の輪番停止により、メーカーの収益格差も拡大しそうだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)