「飲んで被災地を応援しよう」という動きが、各地の飲食店で広がっている。
東日本大震災は、有数の穀倉地帯を抱える東北地方の蔵元に、大きな被害を残した。
宮城県石巻市の蔵元では、ライフラインが止まり、管理を2週間放置せざるを得なかった酒樽から、奇跡の酒を搾り出すことに成功し、「復興酒」を売り出している。また、大崎市のある蔵元では酒蔵の取り壊しを余儀なくされながら、4月に入って最後の仕込みを行った。
自粛モードを経済的被害だとし、震災後早い時期から動画サイトYouTubeで、“「お花見」のお願い”を呼びかけた、岩手県二戸市の蔵元も話題になった。みちのくの酒造りを支える人々が、全国の日本酒ファンの支えを借りて、再び立ち上がっている。
そんな被災酒のなかで、宮城県大崎市に美人4姉妹長女の若夫婦が造る「宮寒梅」があると聞いて、その蔵元を訪れた。
広大で肥沃な平野に佇む「小さな酒蔵」
周辺には未だに通行止めのエリアも
寒梅酒造は、ササニシキやひとめぼれといったブランド米が誕生した米の名門エリア、同市の古川地域にある。辺りは、広大で肥沃な平野「大崎耕土」を有する穀倉地帯だ。空を写す水が張られた田んぼの中に、家族が経営する小さなこの酒蔵が、ぽつんと建っていた。
Photo by Yoriko Kato
「よくたどり着けましたね、ここから2キロメートルくらい先まで川沿いの道が陥没してしまって、ここにはあぜ道を通るしかないんです。ここまでの道が分からないって、みなさん近くからお電話してきますよ」
と出迎えてくれたのは、宮寒梅の杜氏でもある寒梅酒造の岩崎隆聡代表と、代表の長女で、蔵元の後継者である5代目の岩崎真奈さん(27)だ。
酒蔵のすぐ裏を流れる、鳴瀬川の支流の名蓋川では、4、5台の重機がさかんに堤防の修復をしていた。
「堤防の法面がつぶれて広がってしまって、この1ヵ月、梅雨入り前に急ピッチで修復しているんですが、まだ続いているんですよ。うちの蔵にも重機が必要なのですが、あぜ道が細すぎて、まだ入れることができないんです」(岩崎代表)
大崎市は、海沿いにある石巻市や東松島市よりも内陸にあるため、津波の被害はなかったが、3月11日の本震と、後に続く強い余震の影響を受け続けた。蔵元へ向かう途中の道路は、ガタガタに波打ったままところも多く、時おり、大きく陥没している通行止めのエリアを見かけた。