勇気を出して事情を説明し、孤立を防ぐ
介護をしている人は、孤独です。
その理由として、1つは、きょうだいや配偶者がいても、介護の当事者は1人だけというケースが多いこと。
介護が大変だといっても、実際に世話をしていない人にはなかなか伝わらず、共感してもらえません。
もう1つは、Hさんのように介護をしていることを周囲に話さないからです。
明るい話題ではないし、身内の恥をさらしたくない。
疲れてもつらくても、自分の心にフタをしてがんばっている人が非常に多いのです。
相談しないから、ますます理解してもらえず、孤立してしまう。
孤独だから、ストレスがたまり、さらに孤独が深まっていく。
この悪循環です。
とはいえ、最初からまったく話さないわけではありません。
Hさんは、時間に融通の利く勤務体制で、話すタイミングがなかったという事情がありますが、普通は仕事を抜けたり、休んだりする際に、「母の具合が悪くて」などと伝えるものです。
食事やトイレ介助の苦労を愚痴ることもあるでしょう。
ところが、キャリアへの影響を心配したり、恥ずかしさから言い出せない人は多く、たとえ言えたとしても、若い世代が多い職場ではまったく理解されなかったり、休まれると迷惑だという雰囲気が伝わってきたりします。
そればかりか、「施設に預ければいいのに」といった反応が返ってくるとショックですし、とても傷つきます。
私も経験がありますが、「ああ、理解してもらえないんだ…」と落ち込み、一度、がっかりすると心のフタはさらに厚くなります。
介護を話題にするのが怖くなって自分の中でタブー化し、ますます話せなくなってしまうものです。
でも実際、Hさんの場合、身近に介護をしている人がいたのです。
職場で話題にしていれば理解者が見つかり、退職することもなかったかもしれません。