顧客ずらし戦略――?
連載タイトルを見て、頭にクエスチョンマークを浮かべた方も多いことかと思います。いまここで初めて発表した私の造語ですから、誰も知らなくて当たり前です。試しに検索をかけてみると、「ずらし」をキーワードとした経営論がいくつか出てきますが、本連載では、あくまで私の考える「顧客ずらし戦略」について、その本質をいくつかの事例を通してお伝えしていきたいと思います。
私は、マッキンゼー・アンド・カンパニーに2000年から2009年まで在籍し、その間、ペンシルバニア大学ウォートン校でMBAを取得取得。同社を退社したのちに、株式会社フィールドマネージメントというコンサルティングファームを立ち上げました。日本航空、ソニーといった大手企業や、楽天野球団、北海道日本ハムファイターズなどのスポーツチームの経営コンサルティングをはじめ、タクシーの日本交通、音楽ではエイベックス、米西海岸発のセレクトショップ「ロンハーマン」など、クライアントや取引先はさまざまです。
独立から8年になりますが、最近、ふと気づいたことがあります。
「あれ、うちのクライアント企業が属している業界って、産業としてはシュリンク(縮小)しつつあるところが多くないか……?」
日本航空のいる航空業界は、日本の人口減という現実に立ち向かっていかなくてはならない(航空業界に限った話ではないけれども)。
エイベックスのいる音楽業界は、昔と違ってめっきりCDが売れなくなってしまった。
ファイターズやイーグルスのプロ野球界だって、野球が“国民的人気スポーツ”だった時代はとっくに終わっている。
日本交通のタクシー業界は、Uber(ウーバー)の台頭、それに自動運転技術の進展で、先行きが明るいとは言いがたい。