マッキンゼー・アンド・カンパニーやボストン・コンサルティング・グループに代表される戦略系コンサルティング・ファームは、世界中の大企業や政府・公共機関の戦略立案に深く関与し、多大な影響力を行使する頭脳集団だ。だが日本では一部の企業を除き、コンサルティングという職業やその正しい活用法に関する理解はまだまだ浸透していないのが実情ではないだろうか。
この対談連載では、ファームのトップ、そしてコンサルティングを活用する企業経営者双方の声に耳を傾け、コンサルティング業界の現状と展望を探っていく。聞き手を務めるのは、マッキンゼーから独立し、現在はコンサルティング・ファーム「フィールドマネージメント」を率いる並木裕太氏。
第1回は、日本のコンサルティング界における草分け的存在で、ドリームインキュベータ会長の堀紘一氏へのインタビューをお届けする。(構成:日比野恭三)
並木 堀さんは1981年にボストン・コンサルティング・グループ(BCG)に入社され、日本法人の社長を経て、2000年にドリームインキュベータ(DI)を起業されました。今回は、80年代から現在に至る日本のコンサルティング業界の変化や、その中で感じた問題点などについてお話を伺えればと思います。
堀 まずコンサルティングという職業の歴史から振り返っておくと、1900年頃のアメリカでフレデリック・テイラーという人物が最初に始めたとされています。その後、ブーズ(アンド・カンパニー)やマッキンゼー(アンド・カンパニー)というファームが登場したわけですが、当時はコンサルティングといっても経費節減のアドバイスが主な仕事で、例えばマッキンゼーOVA(Overhead Value Analysis)という業務効率化の手法を開発することで大きく成長しました。
そうした中、「戦略」のコンサルティングを始めたのがBCGです。1963年にブルース・ヘンダーソンがBCGを創設した時は、ずいぶん笑い者にされたそうですよ。「戦略を他人に頼む経営者なんているはずがないだろう」と。
並木 戦略コンサルティングという概念そのものがなかった時代ですから、理解を得るのは大変だったでしょうね。