発売当日に重版が決定、現在2.8万部のヒットを記録している『戦略は「一杯のコーヒー」から学べ!』。最新の経営戦略とマーケティング理論を、小説形式でわかりやすく網羅的に学ぶことができるビジネス書だ。著者の永井孝尚氏に執筆の舞台裏を聞いた。

顧客ニーズは重要だが、全てではない

――累計50万部を超える「100円のコーラを1000円で売る方法」シリーズに続く、最新刊ですね。今回も小説形式でわかりやすくマーケティング戦略を解説されています。

永井 「大切なマーケティング戦略を、誰にでも、わかりやすく」お伝えすることを常に念頭に置いて本を書いています。今回は身近で、かつ巷で話題の「コーヒー」を題材にしたので、より多くの方に読んでいただきたいですね。

マーケティングでまず考えるべきは<br />「顧客」よりも「自社の強み」『戦略は「一杯のコーヒー」から学べ!』
定価:1400円(税抜)
中経出版

――ドトール、セブンカフェ、スターバックス、ブルーボトルとまさに「一杯のコーヒー」から学ぶ戦略論ですね。読みやすくて一気に読んでしましました。

永井 ストーリー形式で読者に学んで頂くスタイルは「100円のコーラ」シリーズから継続していますが、「物語としても面白くなった!」というお褒めの言葉も頂いています。嬉しいことですね(笑)。

――『戦略は「一杯のコーヒー」から学べ!』、この一冊でもマーケティング戦略の入門書になると思うのですが、「100円のコーラ」シリーズとの違いはどこにあるのでしょうか。

永井 2011年に出版した『100円のコーラを1000円で売る方法』では、「自社だけが提供でき、他社が提供できない、顧客が求める価値」を考える大切さを中心に書きました。私は日本語でわかりやすく「お客様が買う理由」と言い換えていますが、マーケティングの世界でこれは「バリュープロポジション」と呼ばれています。

 当時、多くの企業が差別化を模索していた状況の中で「100円のコーラを〜」を出版したので、「自分たちのバリュープロポジションを改めて考えてみたい」という感想を多くいただきました。しかし2013年頃から「バリュープロポジションの大切さは、よく分かった。では具体的にどうすれば実現できるのか、教えて欲しい」という声を多く頂くようになりました。つまり多くの企業が具体的な対応策を考え始めてきた、ということですね。

 そこで『戦略は「一杯のコーヒー」から学べ!』では、バリュープロポジションを創り上げるための方法論を提唱しています。「バリュープロポジションをつくる際に最初に考えるべきは、自社か?お客様か?」という質問をよくお客様からいただきます。「顧客中心主義だから、まずお客様だ」と考えがちですが、実はまず考えるべきは「自社らしさとは何か?」なのです。

――「顧客中心主義」なのに、最初にお客さんの要望を考えないということですか?

永井 そこが、多くの日本企業が誤解している点です。「お客さんの要望」から考え始めると、「お客さんの言いなり」になってしまいます。「お客さんの言いなり」は「顧客絶対主義」です。これはいま求められている「顧客中心主義」とは真逆なのです。