その選手管理ノウハウや、年棒をコントロールするノウハウは、逆説的に考えると、「どういう交渉をすれば、選手はチームからより多くの年棒を引きだせるか」が手に取るようにわかるということです。

 MLBの外で、つまり他のスポーツでなら、選手の代理人としてより多くの年棒をチームから獲得するお手伝いができる。FSGは、そう考えました。

 結果として、2011年、NBAきってのスーパースターであるクリーブランド・キャバリアーズのレブロン・ジェームズとマネジメント契約を結ぶことに成功します。彼の年俸はこの5年で16億円から23億円へと上がったほか、広告起用やメディア出演などコート外のマネジメント面でも万全のサポートを受けています。

同じ人員が、同じスキルで
異なる顧客にサービス提供

 FSG本社の社員数は、この5年で30名程度から40名程度へ若干増えただけだと推測されます。同じ人員が、同じスキルを使って、異なる顧客にサービスを提供している。まさに「顧客ずらし戦略」が実行されていることの裏づけであるように思います。

 あなたの会社も、表面的には「**をつくっている会社」なのかもしれませんが、その裏にあるコアなスキルとは何だろうかと、ぜひ一度、考えを巡らせてみてください。

 そのスキルや資産は、いまの事業だけではなく、ちょっとカタチの違う事業に意外なほど簡単に応用でき、その新たな市場では驚くほど競争力があるかもしれません。そして、いまの頭打ちの市場とは別の市場で新しい顧客をつかまえ、会社の成長を実現できるかもしれません。

 本連載2回目以降は、弊社のクライアント企業の事例をケーススタディにして、「顧客ずらし戦略」の可能性をもっともっと掘り下げていきたいと思います。

<ボストン・レッドソックス(FSG)の「顧客ずらし戦略」>

1.「観衆3万7000人の野球の試合を年間80回も開催・運営できる」
 →コンサートなどスポーツ以外のイベントマネジメント業務もできる

2.「球団と球場のスポンサーシップを毎年売り切ることができる」
 →広告代理店事業にも進出できる

3.「企業ブランドがボストンでトップクラスである」
 →PR代理店事業にも進出できる

4.「選手年俸を抑えて強いチームをつくれる」
 →(他リーグの)選手のマネジメント業務もできる