私たちが構築してきた社会は
自由にこだわりを持てる豊かさがあった

 私たちの生活は、オーダーメイドの生活です。

 お仕着せではなく、数ある選択肢から選びながら生活が成り立っています。

 年収700万円のビジネスマンはこんなところに住み、こんな車を持ち、こんな服を着てという画一的な分類はできません。同じような収入があり、同じような地域に住んでいても、人によって選択するものは違います。

「私はユニクロではなく無印良品が好き」

「いやいや、私は無印良品よりもユニクロが好き」

 大きな差があるわけでも、リッチな生活を追求しているわけでもありません。私たちが求めてきたのは、自分なりの「こだわり」を持てる生活です。

 消費者の要求に応えるため、企業もある種のこだわりや付加価値をいかに提供できるかという部分で勝負しています。同じような商品でも何かしらのプラスアルファを付加し、消費者の心理を刺激する商品を開発しようと躍起になっています。

 私たちは、そうして生み出された無数の選択肢のなかから、こだわりを持って選ぶという「豊かさ」を享受しているのです。その豊かさは、リッチというより細かい選択が自由にできるという豊かさです。

「そんなの、どっちでもいいじゃん」

「このきめ細かさが、日本人らしい資質だね」

 外国人には、肯定・否定両面の印象を与えているようです。日本人は、よく主体性がないと言われますが、モノ選びをするときの日本人はものすごく主体性を発揮しているような気がします。