前々回のコラムで、わが国の政治の歪みの根源は1票の格差に求められるのではないかという仮説を提示した。そして、最高裁が1票の格差について「違憲状態」という最終的な判断を下した以上、少なくとも次回の総選挙までには選挙制度の改革が不可避であると思われることを指摘した。

 では、改革を行うとして、わが国の現状に照らせば、どのような選挙制度が望ましいのだろうか。

世界に類を見ない強大な第2院

 1票の格差を是正すること自体は、実は技術的には決して難しいことではない。住民基本台帳をベースに、都道府県や市町村の行政区分に必ずしもこだわることなく、ある程度弾力的に運用しさえすれば、1票の格差を0.999票くらいに縮めることは十分可能であろう。また、これも前々回のコラムで指摘したように、若い世代の投票コストを引き下げ、世代間の投票コストの平準化(実質的な平等化)を図るために、エストニアではすでに実施しているように、インターネット投票を導入することも技術的には十分対処可能であると考えられる。

 ところで、1票の格差を是正し、インターネット投票を導入すれば、それでわが国の政治状況は一足飛びに改善するのだろうか。もちろんこの2つを実現することだけでも、これまでに比べれば、政治に劇的な変化がもたらされることは疑いを入れない。しかし、わが国の政治がともすれば漂流しがちな背景には、世界でもあまり類を見ない強大な第2院、つまり参議院の存在が挙げられる。

 わが国の将来を見据えれば、この問題にメスを入れることも、1票の格差是正、投票コストの平準化と並ぶ極めて重要な政策課題である。この問題について具体的に考察してみよう。