衆議院と参議院の存在意義(区別)がよくわからないという声を耳にするが、その一因として、両院とも同じような選挙制度を採用していることかもあると思われる。衆議院と参議院の選挙制度をまったく別個のものとして設計すれば、両院の個性もそれに伴わせて徐々にではあれ際立ってくるのではないだろうか。
参議院は決算の分析を主任務とする新しい慣行を作れ
ところで、わが国の政権がなかなか安定しない大きな原因の1つが衆参のねじれにあることは、衆知の通りである。1989年の参議院選挙で時の政権党である自民党が大敗して以来、ねじれ国会はむしろ常態に近いものとなっている。参議院の議決を覆すためには、衆議院で3分の2以上の多数で再議決する必要がある。そのため参議院は首相指名と予算の議決を除いては、ほぼ衆議院と同等の強い権限を有しているのであるから、政権がなかなか安定しないのも理の当然であろう。このように強大な参議院の機能を変えるためには憲法改正を必要とするが、憲法の改正はわが国では大変な難事であって、現実性に乏しいことは言うまでもない。
このような現実を踏まえれば、参議院を100%比例代表制で構成することは、少数政党の比重が高まり、衆参のねじれを大きくする方向にベクトルが働き、さらに政権を不安定にさせるのではないかという疑問が寄せられるかも知れない。
もう一度、参議院の本来的な使命に立ち戻って考えてみよう。先に参議院の本来的な使命は衆議院をチェックすることであると指摘した。衆議院の使命は首相を選出し政権を担うことである。すなわち政治を行うことであり、政治とは煎じ詰めれば税金を分配すること(予算の作成)である。このように考えれば、参議院の使命は決算のチェック、すなわち予算の執行状況を精査して、その具体的な効果対費用を詳らかにし、市民にその分析結果を分かりやすく開示することにあるのではないだろうか。