思いついた話を全部話すと、
話が淀んでしまう。

 面白い人と面白くない人との差は本当に微妙です。

 その微妙なところで、早く出せるかどうか。

 私は「笑っていいとも!」で明石家さんまさんとバラエティー番組を毎週金曜日レギュラーでご一緒させていただいたことがあります。

 さんまさんの頭の回転がすごく速いとわかるのは、ネタを捨てていくことです。

「今、さんまさんはこの話をしようと思ったけど捨てた」というのがわかります。かなり面白いネタがあったはずなのにそれを捨てて、今の話題にどんどん入っていく。

 雑談の話芸は、バラエティー番組に学ぶべきものがたくさんあります。

 捨てた分だけ、説得力が生まれます。

 捨てる話には、2つあります。

 1つは、用意してきた話。

 ダンドリが見えてしまうと、聞き手はシラケてしまうのです。

 用意してきた話は、どうしても整理されすぎていて、ダンドリが見えてしまうのです。

 もう1つは、その場で思いついた話。

 その場で思いついた話でも、全部話していたのでは、話の流れを止めてしまいます。

 話には、流れがあります。

 話のヘタな人は、思いついた話を全部話してしまうために、話の流れがよどんでしまうのです。

 時には、もうすんだ話がまた戻ったりします。

 話は、生き物です。

 あっというまに、別の話に変わっていきます。

 ヨットの帆をあやつるように、別の話に変わっても、乗っていかないといけません。

 さんまさんの話芸のすごさは、どんなに面白いネタでも、流れが変わったら、あっさり捨ててしまうところです。

 私たちが聞いているのは、さんまさんが思い浮かべているネタの10分の1以下なのです。

 だからこそ、面白いのです。