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1億円以上を稼ぐ新人作家も相次ぎ誕生!
侮れないアメリカの電子“自費”出版ブーム

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第150回】 2011年6月24日
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 さて、現在アメリカでは電子書籍がフルスピードでビジネス展開されているが、電子書籍用の自費出版プラットフォームはその担い手として大いに注目されている。ここに参入しているのは、アマゾンや大手書籍チェーンのバーンズ&ノーブルの他に、ルルやファストペンシルなどの新興企業。それぞれに特徴があるが、だいたいの仕組みは、以下のようなものだ。

 すでに書き上がった小説のテキストがあるとしよう。ユーザーは、そのテキストファイルに加えて、表紙の図版ファイルを準備する。表紙は、誰かデザイナーに制作してもらってもいいし、自分で写真と文字を組み合わせて作ることもできるだろう。自費出版プラットフォームによっては、表紙を作成するテンプレートまで揃えているところもあり、それを使うとデザインを心配する必要もない。

 さて、自費出版プラットフォームのサイトにアクセスして、まずは登録を済ませる。そこからは、流れ作業に乗るだけでいい。出版する本のタイトル、著者、著作権所有者などを入力し、さらに世界のどこで売りたいか、価格はいくらか、ロイアリティー(印税)は何%にするかなどを決めて、テキストと表紙図版のファイルをアップロードする。

 簡単な審査を経て、一両日内には自作がオンライン書店に並んでいるのを見ることになるだろう。何ヵ月もかかった従来の出版からは想像できないスピードだ。その後は、自分のアカウントにアクセスすれば、売り上げ数や印税収入がリアルタイムで確認できるようになっているのである。

 アマンダ・ホッキングの他にも、素人作家がこうした自費出版プラットフォームで成功を収めた例は、ポツポツと見られるようになってきた。保険の仕事をしていたジョン・ロックという男性も最近、アマゾンDTPの「ミリオンセラー・クラブ」に加わったと報じられたところだ。

 無名の作家がデビューする場所として、自費出版プラットフォームはもはや怪しげで悲しげなところではなくなったということだ。

 だが、それだけではない。出版業界にもっと大きなインパクトを与えそうなのは、有名作家がここへ移行してきていることである。

 電子書籍の場合、本を出版する仕組みは、自費出版プラットフォームと出版社経由とでは大した違いはない。プリント版書籍ならば、出版社からつながっていた印刷や運送、路面の書店へのコネクションが必要だったろう。だが、電子書籍ならばただ必要なファイルをネット上のプラットフォームに上げて、しかるべき電子書籍リーダーやオンライン書店に届かせればいいだけである。

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瀧口範子
[ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。

ビジネスモデルの破壊者たち

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