マッキンゼー・アンド・カンパニーなど要求水準の高いビジネスの現場を渡り歩き、「可能な限り優れたパフォーマンスを実現するためにはどうすべきか?」と試行錯誤してきた著者が提案する、ビジネスパーソンのためのまったく新しい学習法『新・独学術――外資系コンサルの世界で磨き抜いた合理的方法』。佐藤優氏が「ビジネスパーソンにとって本当に役に立つ最良の書」と絶賛するなど話題の同書より一部を特別公開する。

「信頼される」ことも仕事のうち

『新・独学術』では、賢さを身につける方法について述べていますが、実際に賢くなるだけではなく「賢く見せる」ことも重要です。

 賢くなるには普段の努力の積み重ねが必要ですが、賢く見せることはマインドセットを切り替えればすぐにできます。そしてこのマインドセットの切り替えは、単なる付け焼き刃ではなく、ビジネススキルの本質でもあります。

 たとえば、コンサルタントの顧客である経営者は、ほとんどの場合、その道のプロ中のプロです。そのプロを相手に「問題点を指摘し、新たな価値を生み出す」というのがコンサルタントの仕事ですが、クライアントに会ってからのわずかな時間で「こいつはデキる」「信頼に足る」「この人と一緒に仕事をしたい」と思わせることができるか、そこが勝負の分かれ目です。

 俗っぽくいうなら、最初の段階で「こいつは賢そうだ」と思われれば次のフェーズに進めますが、「こいつはダメだ」「馬鹿っぽい」と思われたら、その時点でビジネスは終わりです。これはコンサルタントに限らず、ビジネスではどんな世界でもあてはまるのではないでしょうか。

 初対面の相手に対し、わずかな時間で「この人は賢そうだ」「デキそうだ」「信頼に足る」と思わせる。これこそ、どんな業界でも求められる重要なスキルであり、マッキンゼーの人たちは「このスキル」が格段に優れています。きっとあなたの周りにも「このスキル」(一瞬で、相手に賢そうだと思われるスキル)を持っている人がいるでしょう。

 では、どうすれば「賢い」と思わせることができるのでしょうか

 私はマッキンゼーにいる間に、ある共通点に気づきました。たしかに、マッキンゼーで働く人たちはもともと優秀な人が多い。とはいえ、誰もが最初から「一瞬にして、相手に賢そうだと思われるスキル」を身につけているわけではありません。

 実際、新卒にせよ中途にせよ、マッキンゼーに入った入社1年目の社員は「自分はなんて頭が悪いんだ」と誰もが痛感します。現在もパートナーとして活躍されている方から「あまりにも自分の能力の低さに失望してしまい、精神的に病んで長期休暇を取ったことがあった」と聞いたときは驚きましたが、程度のちがいこそあれ皆そんな感じです。

 それなのにマインドセットを切り替えることでほとんどすべてのコンサルタントがマッキンゼー流の話し方、考え方をするようになり、クライアントから高い信頼を得ていくのです。

 そもそも、人はどういう相手に対して「あの人は賢い」「賢そうだ」と瞬時に感じるのでしょうか。マッキンゼーをはじめ、多くの優れたビジネスパーソンを見て私が感じることは、次の3つに集約されます。

(1)空気を読まない
(2)「そもそも」を語れる
(3)一言でまとめられる

 こんな人に出会ったとき、私たちは「賢そうだ」と感じると思うのです。

 なぜそう感じるのか、一つひとつ説明していきます。